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米国内では65歳以上の高齢者の4分の1以上が一人で暮らしています。そして、その割合は年齢が上がるとともに増加します。家族が近所に住んでいる人もいるかもしれませんが、多くの方の場合そういった人はおらず、自宅で自立して生活を続けていくには、近所の友人や近隣の人たちに身の回りの世話を頼らざるを得ないのが現状です。世話の内容は、近所づきあいや食料品の買い出しのお手伝い、医者へ連れて行くことなどが含まれます。
この記事では実際にコミュニティの中で家族以外の知り合いに頼って生活をしている二組の方のお話しを紹介します。
第二話:バーバラさんとロンさんのケース
バーバラさんとロンさんは80代の夫婦です。二人は低所得高齢者専用の住宅に住んでいます。ロンさんは体は健康ですが、アルツハイマー型認知症を患っています。一方のバーバラさんは、認知機能はしっかりしているものの、身体的に病弱でした。それぞれが違った形で、日常生活に影響を及ぼす症状を抱えていましたが、協力しながら暮らしていました。記憶障害があるロンさんでもなんとか料理や家事をこなしていました。
時間が経つにつれて、二人の生活状況は困難になっていきました。バーバラさんは記憶障害が悪化するロンさんの世話をするうちに、孤立し、鬱病を発症しました。夫婦にはサービスを提供するソーシャルワーカーがおり、二人には身の回りの手伝いが必要だと判断ました。そこでソーシャルワーカーはまず、夫婦の家族や友人の中でサポートできる人がいないか、あたってみました。
ソーシャルワーカーは初めに、バーバラさんとロンさんの息子に連絡しました。しかし、彼らの関係は疎遠になっており、息子さんは両親の世話をすることを拒みました。時折両親を訪ねた際には、かなり憤った様子で、親のせいで幼少時代散々な目に遭ってきたことをソーシャルワーカーに訴えていました。
次にソーシャルワーカーは、夫婦の孫娘に連絡しました。孫娘は、夫婦の所に引っ越してきました。はじめは夫婦の世話をしてくれると思われていましたが、ふたを開けてみると、実は孫娘はホームレスで、祖父母に住む場所や金銭的に依存していることが判明しました。さらに、彼女が祖父母の家から現金や品物を盗んでいたのではと疑われるようなこともありましたが、証明することができませんでした。孫娘は引き続き夫婦のところに住み続けました。
その後ソーシャルワーカーは、夫婦が法的な代理人を知り合いに依頼していたことを知ります。しかしながら、この知り合いも信頼がおける人物でなく、不当に夫婦の財産を使いこんでいるようでした。
これらの状況が続く中、バーバラさんがソーシャルワーカーに別の住居を探してくれるように頼みました。夫婦共に身体的にも精神的にも衰え、介護の必要があったからです。状況はさらに困難を極めました。主治医の診断では二人とも身体的にも精神的にも問題なく、加齢による通常の衰えだという判断をされてしまいました。さらに、ロンさんはバーバラさんより介護の必要度が高い状態にあることから、施設を探す際も、二人が一緒に暮らせる施設が見つかりませんでした。このような状況下の中、バーバラさんはどうしていいわからず、幾度も決断を覆しました。
その後、バーバラさんとロンさんは、脱水症状やその他健康状態の悪化により入院することになりました。そして、介護施設へと移され、その後はアシステッドリビング施設に入居しました。しかし健康状態は改善せず、病院と介護施設を行き来する生活が続く中、バーバラさんは亡くなりました。
このケースは非常に極端な例で、支援する人の輪(サポートシステム)が限られていた場合になります。
夫婦が互いに支え合うケースは一般的ではありますが、一方で周りからの支援を検討することも大切です。このケースではありがたいことに、ソーシャルワーカーが二人の夫婦を見守っていましたが、立場上差し伸べられる支援に限りがあったのも事実です。私達のコミュニティの専門家は、このような複雑なケースは私たちが想像しているよりはるかに多く現実に起こっていると指摘しています。そのため、事前にできるだけの準備をしておくことがとても大切なのです。
登場人物の名前は、プライバシー保護のため、変更されています。
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