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注:各グループとのインタビュー、および当初書かれた記事は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前に作成されたものです。現在は全ての合唱グループが、オンラインで練習を行っています。

規則正しい食事、運動、十分な休息が健康維持に役立つことは、誰もが知っていることですが、合唱をすることが高齢者の心身に新たな活力を与えるという研究結果については、あまり知られていない。

南カリフォルニアには様々な日本語の合唱グループが活動している。メンバーは集まって一緒に歌うことによる多くのメリットを実感している。中にはKeiro「助成金プログラム」の支援を受けているグループもあり、助成金によって、高齢のメンバーが発表会、リハーサル、外出など、日本人や日系人コミュニティの方が集まって合唱する機会を提供するのに役立っている。

歌う喜びが孤立の軽減につながる

合唱グループの一つ、オレンジカウンティフレンドシップクワイア(OCFC)は、他の人との合唱が特別な喜びになっている最高齢のメンバーもいると語る。担当者は、グループで合唱することが健康に良い、それを実感していると説明している。

「やっぱり声を出す、大きな声をだして、気分転換にもなりますし、そういうのはあるかなと思います。」当時のOCFCグループ運営委員長の亀井博史氏は、高齢者が合唱に参加するということはとても大きな力になると言い、仲間のメンバーもそれにうなずく。

「出来上がった時のよろこびっていうのはやはり一人でやっているより違うと思います。」と運営副委員長の志村安佐子氏は付け加えた。

ocfc concert
OCFC コンサート(2019)

オックスフォード大学出版局(Oxford University Press)」が掲載した研究によれば、合唱という環境で得る喜びの感情は高齢者の心身の健康に好影響をもたらすという。研究者たちはこれが特に白人以外の人々に当てはまることを発見し、合唱に参加した後に孤独感や無気力症が軽減した結果を示している。

合唱のプログラム内容がより文化的に配慮されている場合、メリットが強化される可能性があるという研究もされている。さらに、ジョージワシントン大学ミルケン公衆衛生大学院(Milken Institute School of Public Health)の研究結果によれば、合唱グループに参加した人々は参加しなかった人々よりも意欲が高く、孤独感が低く、より活動的になることが明らかになっている。また同じ研究によれば転倒、医者にかかる回数、薬の服用も減るという報告も掲載されている。

グループとしてのつながり

さくらコーラス パフォーマンス(2019)
さくらコーラスリハーサル模様

女声合唱グループさくらコーラスは、合唱で歌う場があることでメンバーの孤独感と社会的孤立の抑制にも役立つと言う。Keiroの助成金の支援もあり、同合唱グループは高齢メンバーに発表会やリハーサルの会場への送迎を提供できるようになった。

「年齢を重ねるにつれて運転できる人が減って行くので、外出が難しくなります」とさくらコーラスの副マネージャの野口ジュンコ氏は語る。同グループは毎週1回午前中にトーランスのフェイス・ユナイテッド・メソジスト教会に集まる。

野口氏によれば、メンバーの中には90代の女性メンバーがいて、自力で歌うことができなくなっているにも関わらず、練習に参加するために努力を続けているという。

「ただそこに来て聴いているだけで、彼女のためになると感じます。[その努力が]とても素晴らしいと思います」と野口氏は語る。その女性はさくらコーラスの30年来のメンバーで、今でもコミュニティの大切な一員だそうだ。

LAメンズグリークラブのメンバーである矢島成倖氏は、合唱は外出する理由を高齢者に与える、と説明した。同クラブはKeiro「助成金プログラム」の支援によって、年に1度の発表会を開催し、メンバーが集まってリハーサルをし、合唱を披露する機会を提供することができた。矢島氏は人は歳を取るに連れて外出するのがますます困難になるという。「自宅から外に出るのが、本当に、本当に大変になります。」しかしながら外出することが「高齢者にとって重要」なのだと、彼は強調した。

LAメンズグリークラブ Evening of Aloha演奏 (2013)
mens glee club performance
LA メンズグリークラブ敬老の日フェスティバル演奏 (2019)

オランダのティルブルフ大学(Tilburg University)が発表した2012年の研究によれば、55歳以上の人々の社会統合に最も影響を与えたのは、合唱のような文化的活動や趣味であると述べている。研究は、社会統合への効果や社会的な結び付きが強化された理由は、趣味の活動によってより強力な人間関係ができたためだとしている。言い換えれば、リハーサルや発表会で友情をはぐくむ機会は、社会的孤立や孤独感の低下につながるという事になる。

LAメンズグリークラブのメンバーたちは、合唱でつながったメンバー同士活動以外でも交流することがあるという。新年会から新メンバーの歓迎会に至るまで、様々な社交的な集まりを企画し、楽しんでいるという。

日本特有な「合唱」

何より合唱が持つ集団的な特色こそが、似た文化的背景を持つ高齢者が集うことにつながっていると言える。

「日本人は合唱が大好きです」とプロのオペラ指導者でサウスベイ・シンガーズ監督を務めるスガナオコ氏は語る。「修練の仕方やプロセス、合唱から得られるもの、日本文化に通ずるものが多いと思います。だから日本人は自然と合唱に惹かれるものがあるのではと感じます。」

OCFC コンサート2019

日本では合唱は「大きなグループが協力して一緒に1つのものを頑張って作る」考え方が根本にあるとスガ氏は説明する。合唱に参加したり合唱を聞いたりすることがそれぞれに有益であり、私たちのコミュニティにおいて音楽とアートが人を集つめ一つになるのは、この根本的な考え方によるものかもしれない。

パート2へ続く


オレンジカウンティフレンドシップクワイア: http://ocfc-choir.com
LAメンズグリークラブ: https://laglee.org/
サウスベイ・シンガーズ: https://www.southbaysingers.info/