Published
新型コロナウイルスが引き起こしたパンデミックはあらゆる人々の暮らしに影響を与えた。合唱グループも例外ではなく、グループ特有の課題に直面し、2020年3月以来、どのグループも直接集まれない状態が続いている。
しかし、同時にこのパンデミックのおかげでメンバーの絆が強まったメリットもあった。取材した全グループが普通の生活に戻れる日を心待ちにしている。
新しい練習方法を考案
合唱グループにとっての重大課題の1つが、対面で直接会えない中、どのように練習を継続するかということだった。テレビ会議は2人以上が同時に話すのに向いていないため、オンライン上でお互いにハーモニーを奏でる練習ができない。その上担当者や指導者は、発表会の予定がない中、如何にメンバーのモチベーションを保つのかに苦労した。パンデミックの最中に前進し続けるためには、各グループが工夫をする必要があった。
まずは全員をインターネットに接続させることから始まった。さくらコーラスの場合は主要メンバーがボランティアでトレーナー役を引き受け、数週間かけて全てのメンバーをインターネットに接続させ、オンラインで練習に参加できるようにした。
オンラインに接続した後は、各パーツの個別リハーサルを実施して効果的な練習を行ったグループもいた。サウスベイ・シンガーズのスガナオコ氏は、次のように話す。「各メンバーが歌を歌って指導者からフィードバックを受ける時間を確保するため、合唱団を声のパート別に少人数のグループに分けることにしました。」
一方でLA メンズグリークラブは、各人の声を聞けるという機能を利用してメンバーが「ソロパート」を歌う時間を設けた。彼らは次のように話す。「ズームの性質上In-personとは程遠いリハーサルです。しかし、全員をMuteにして一人が交代で指名されて歌う練習方法は特異な緊張感を与えています。」
メンバーの意欲を保つことも課題だったが、オレンジカウンティフレンドシップクワイア(OCFC)や さくらコーラスなどのグループは、各パートを録音してからそれらの音声を1つにまとめるという録音プロジェクトに参加することで課題に取り組んだ。発生から10年経った東北の震災と津波の犠牲者を追悼するイベント等のオンライン録音プロジェクト(The Bridge Project主催、ロサンゼルス合唱とりまとめ担当はサウスベイ・シンガーズのスガ・ナオコ氏)を通じて、参加者は歌で日本を励ますことに貢献し、そういった機会を心待ちにするようになった。
みんなの社交の場
オンライン環境は練習の場だけではなく、全てのグループにとって人々がつながりを保つための大切な社交場にもなった。
スガ氏は次のように述べた。「パンデミックが始まった当初は高齢メンバーの多くが、孤独感や生き甲斐の喪失や憂鬱に見舞われていました。当初はレッスンとリハーサルの大部分をメンバーの話を聞き、励ます時間に使いました。」また同グループは、小規模なグループでの練習によって「パンデミック以前にはなかったようなメンバー同士の結び付きが生また」というプラスの効果があることにも気づいたという。
さらに、LAメンズグリークラブの場合は人と人とが会う社交的な集まりをオンラインで開催することで、以前からの伝統を維持している。
さくらコーラスの場合は、「私のニュース(my news)」というコーナーを毎月開催(第1火曜日)し、希望者2名がロックダウン期間中の暮らしの様々なエピソードを披露する時間を設けた。それによりメンバー同士の結び付きを維持する方法にもつながった。また同グループは週に1回のミーティングにとどまらず、メンバーのエピソードを1つにまとめた「桜並木」という小冊子も作成した。
音楽の力
全てのグループが、直接合って練習を安全に再開できる日が訪れることを心待ちにしている。しかし、同時にこの困難な時期を乗り越えられたのは音楽とグループのメンバーのおかげだと、全グループが回答した。
OCFCのメンバーは、次のように述べた。「人と交わる機会が制限された生活がいかに私達の精神に影響するかを実感させられたこの一年でした。そんな中でワンパターン化された生活にはまってしまいそうになる気持の焦りを、ゆるやかにしてくれるのが音楽を楽しんでいる時間です。」
スガ氏はこう付け加えた。「音楽は万能薬ではありません。でも、いつの時代でも不安で恐怖に満ちたときに、ほっとする時間・瞬間を人々に与えてくれるものです。私はそう強く信じています。」
オレンジカウンティフレンドシップクワイア: http://ocfc-choir.com
LAメンズグリークラブ: https://laglee.org/
サウスベイ・シンガーズ: https://www.southbaysingers.info/
Bridge Project: https://www.linkla.info/artists