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「私たちが提供しているのは単に食事の提供というサービスではありません。[…] 尊厳ある充実した老後を一人でも多くの高齢者の方に、また一日でも長く健康長寿を楽しんでいただきたいという願いを込めて総合サービスを提供しています。」

―仲真節子、高齢者昼食会 (Little Tokyo Nutrition Services) Executive Director

暖冬となったロサンゼルスのとある2月の火曜日の朝。リトル東京タワーズ1階の食堂裏のキッチンでは朝から元気な掛け声が響き渡る。20年以上勤めている宮里まりこさんはボランティアを束ねるダイニングコーディネーター。ボランティアの人たちが美味しそうな食事をお皿とお弁当ボックスに詰める:照り焼きチキンの横にかぼちゃの天ぷら、そして炊き込みご飯が真ん中に並ぶ。ここに牛乳がついて3ドル未満で高齢者の方が、タワーズの食堂で、あるいは自宅に届けられて日本食を食べられる。

「身体と精神の健康保持」を目的として高齢者へ食事と交流の場を提供している高齢者昼食会(Little Tokyo Senior Nutrition Services, LTNS)では、祝日を除く平日に、約200食近くのバランスの取れた昼食を低価格でリトル東京タワーズの住人及び周辺に住む高齢者を中心に提供している。健康を意識した食事は衛生管理から地域自治体認定の栄養士をつけることまで徹底した管理がなされている。類似する食事提供プログラムへの政府からの支援金が減少しつつある今、Keiroからの助成金はプログラムの運営コストを補っている。

タワーズの住人で食堂のジンジャーポークがお勧めメニューだという佐々木政義さんは毎日食堂を訪れている。バランスの取れた食事を手軽に食べられるのは便利だと語る。にぎやかな食堂は、食事という身体的なメリットだけではなく精神的な面でのメリットもある。ここは、高齢者にとって社会的孤立を防ぎ、心身共に健康を保つ場となっている。同時にスタッフやボランティアも見守り隊として高齢者の方の健康状態を確認することができる。

さらに、毎日100食近くを外出が困難な近隣に住む日本人及び日系アメリカ人高齢者に配達している。1976年の設立時以来、高齢者昼食会はダウンタウンに住む多くの高齢者へ健康と笑顔を届けている。

ダウンタウンのような都会は一見、多くの人との交流の場があるようにとらえられがちだが、高齢者にとって都会暮らしは活動範囲を狭め、周りとの交流の場を減らし、孤立する確率を増やす¹というリスクもあるという。都会では安全性や治安への懸念から高齢者が外出しなくなり、孤立につながる可能性が高い。食事提供プログラム等の定期的な外部との交流を持つことは高齢者の社会的な孤立を防ぐために役立つ。

高齢者だけではなく、このプログラムはボランティアやスタッフにも交流の場となっている。食堂の裏では毎日10名前後のボランティアの方々が忙しくお弁当をつめている。その一人、川口利江さんは退職後、自身の健康維持も考え週数回手伝いに来て3年経つという。

トップを務める仲真節子さんは、助成金受賞者のランチョンで次のように述べた。「私たちが提供しているのは単に食事の提供というサービスではありません。1976年創立以来、40年余り、尊厳ある充実した老後を一人でも多くの高齢者の方に、また一日でも長く健康長寿を楽しんでいただきたいという願いを込めて総合サービスを提供しています。日本人としての誇りと文化を保持したいと願い、努力しています。それが戦前、戦後、多くの日系の先輩方の苦労に報いることだと信じているからです。」

1 Gusmano, M. K., & Rodwin, V.G. (2010). Urban Aging, Social Isolation, and Emergency Preparedness. Global Ageing: Issues & Action, 6(2). Retrieved from: https://www.ifa-fiv.org/wp-content/uploads/global-ageing/6.2/6.2.gusmano.rodwin.pdf