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「しかたがない」医療から「ベストな」医療へ

~Keiro-プロビデンス癒しケアプログラムの立ち上げにあたって~

著:八浪祐一・エドウィン


現在の医療の進歩は著しく、今までの常識を超える様々な治療が開発されています。治療不可能だった方が回復したり、新たな治療法の開発により以前よりはるかに長い間病気とともに生存することが可能となりました。これは素晴らしいことですが、実際は治療によって生存できるようになったとしても、以前とまったく同じ生活に戻れる可能性は高くはありません。まさに現代は病と「共に生きていく」人が増えている時代なのです。

こうした最新の治療を受けた方の話を伺ってみると、「本当は化学療法などうけたくなかった」「胃ろう管を挿入したくはなかったが勧められるがまま受けてしまった」「本当に体がきつく、これからどうしていけばいいのか分からない」という方も多いのが現状です。

医療の進歩と共に選択肢も増え、その中には本人あるいは家族への負担が大きい治療もあります。しかし、医療の専門的知識に詳しくない普通の患者が、痛みや倦怠感に苦しみ、不安な思いを抱えた状態で説明を受けたとしても果たして深く理解して正しい選択が出来るのでしょうか。患者と医者が協力して治療方針を決定することになっていますが、実際には多くの場合、一方的に説明と選択肢だけ与えられた結果、深く理解できず勧められるがまま治療を受けているのが現状ではないでしょうか。

「しかたがない」という言葉があります。治療にあたって、医療的な難しい説明の嵐に戸惑っているうちに本当は希望していなかった治療を受けてしまった方が思いのほか多く、特に日本人や日系人の方の場合「しかたがない」と受け止め我慢し続けているケースも少なくありません。

皆さん各々価値観や人生観、またその社会的状況により一番大切にしたいものも違います。ある人にとっては痛みがコントロールされ、自宅で穏やかに最期を迎えることがベストかも知れません。また別の方にとっては子供が独り立ちできるまでは何としても頑張ることがベストかも知れません。専門医の先生方は限られた時間のなか、そうした話をする時間がないかもしれません。

また、症状が厳しく痛みや倦怠感などで苦しい時には先行きを考えることも、「自分らしく生きる」ことも困難でしょう。

私はアメリカに戻るまで、日本で10年近くホスピスケアに携わって参りました。人生の最終章を迎えた方に対していかに穏やかに、最期まで自分らしく生きていただくにはどのようなお手伝いができるか日々考えながら働いておりました。

しかし、ホスピスケアはごく一部の末期の患者しか受けることができないのが現状です。深刻な病の診断を受け、現在治療中の方、またこれから治療を開始する方のほうが、むしろ痛みや倦怠感、その他精神的な苦痛にさらされ、これからどうやって人生を生き抜くのか不安で悩み苦しんでいらっしゃるのではないでしょうか。

本当の緩和ケアとは、様々な病気を抱えたすべての患者に対し、深刻な病の診断を受けた時から、身体的、精神的、社会的な苦痛を和らげ支えていく医療なのです。

つらい症状がコントロールされ、また治療の意味、期待できる結果や限界の説明を受け、ご自身にとって何が一番大切なのかをゆっくりと考える機会を持つことができれば、選択肢はおのずと見えてくるはずです。

この度Keiroとプロビデンスが提携して癒しケアプログラム(Keiro-Providence Iyashi Care Program)」を立ち上げることとなりました。皆様と一緒に、闘病されるご本人にとって「ベスト」でなおかつ「癒し」を感じられるような治療を考え、身体的、精神的な苦痛を和らげ、ご自分らしく生きられるようお手伝いができれば幸いです。

 

著者について

八浪先生はプロビデンストリニティケア・ホスピス&地域緩和ケアの副医長です。Keiroとプロビデンスが提携して始めた「癒しケア」プログラムの担当医です。先生のプロフィールはこちらをご参照ください。