高齢者の全体的な健康を考えるうえで、体の健康は一つの重要な要素です。年齢を重ねるに連れ、活動レベルが低下し、体力やスタミナが低下することがあります。運動はこうした問題への対処法となるととともに、健康な骨を維持し、関節炎からくる関節の腫れや傷みを抑え、高血圧や糖尿病になるリスクを低減するといった健康上のメリットをもたらしてくれます(Centers for Disease Control, n.d.)。定期的に運動をすることにより、自立した生活を維持するだけでなく、転倒のリスクを軽減することもできます。
そのため、コロナウイルスの流行で外出を控え自宅にいる場合でも、運動し続けることは大変重要です。自宅からネットを駆使して運動することに慣れるのに少し時間がかかるかもしれませんが、自宅で安全を確保しつつ活動的に過ごす方法はたくさんあります。
新しい運動を探す
様々なサイトや方法で幅広いエクササイズプログラムを自宅にいながら実施することができます。新しいプログラムへの参加を決めたら、始める前に必ず主治医に相談してください(Centers for Disease Control, n.d.)。自身の求めている条件に見合ったオンラインプログラムを見つける方法をいくつか紹介します。
- 興味のあるものを継続する
- 以前太極拳やズンバのプログラムに参加していたことがある場合、その時のインストラクターやコミュニティセンターが同様のクラスをオンラインで開催していないか確認します。
- 友人や家族に尋ねる
- ご友人やご家族に、自宅で活動的に過ごすためにどんなことをしているか尋ねたり、あるいは、つながりを維持するためにZoomで一緒に運動を行ってみてはいかがでしょうか。
- YouTubeで探す
- YouTubeで検索すると、様々な無料のエクササイズ動画を見つけることができます。
- 興味のあるエクササイズを探します。バランス、可動性、体力アップ、耐久性など、特定のテーマに焦点を当てたエクササイズプログラムも数多くあります。探す場合は、そのプログラムが訓練を受けた専門家によるものか確認するようにしましょう。
- その他のオンラインリソース
- ネットにはオンラインエクササイズの選択肢がたくさんあるので圧倒されてしまい、どれを選んだらよいのかわからなくなるかもしれません。どこから選ぶべきかわからない場合は、次のサイトを検討してください。
- AARPは自宅でできる短いフィットネス動画をいくつか提供しています。これらの動画はバランス、体に負担の少ない有酸素運動、ウォーキングなどのさまざまなエクササイズを取り上げています。
- National Institute on Aging (NIH) は自宅でできるエクササイズを紹介するYouTubeチャンネルがあります。
- NIHのウェブサイトには、こちらのような記事をはじめ、運動全般に関する詳しい情報が英語で紹介されています。
- Pocket Yoga
- こちらは無料のスマホアプリで、資格をもったヨガインストラクターがヨガの動きを写真やビデオで紹介します。様々な長さやレベルのヨガセッションから自分に合ったものを選ぶことができます。
- Johnson and Johnson: 7 Minute Workout
- こちらは無料スマホアプリで、器具を使わずに自宅でできるエクササイズを紹介しています。これらの短いエクササイズは、運動する時間があまりない場合に適しています。
- MapMyWalk
- こちらは無料のスマホアプリで、ウォーキングの目標設定、記録、新しいルートの提案などを通し、日課にしているウォーキングをより充実させることができます。
- Senior Fitness with Meredith
- これは高齢者向けに健康情報や運動を動画で提供するYouTubeチャンネルです。これらのビデオには姿勢やバランス運動が含まれています。
- Yoga with Adriene
- Yoga with Adrieneは、様々なレベルのヨガの動画を取り上げたYouTubeチャンネルです。初心者向けにわかりやすく作られた動画がある他、背中の痛みや首、肩といった特定の体の部位に焦点を絞ったビデオもあります。
運動を始める際に知っておくべきポイント
自分の限界を知る
- 運動は、激しかったり、ハードなものである必要はありません。自分の体力の限界に併せて選びましょう。怪我をしてしまっては本末転倒です。
- 運動が通常版とモディフィケーションを加えた(加減が弱い内容)の両方を提供するプログラムを探します(ジャンプの代わりにウォーキング、立って行う代わりに座って行うといった変更)。
- 必要に応じて休憩を取り、気分が悪くなったり痛みを感じたりした場合は、中止するようにします。
- 新しいプログラムを始める場合は、安全か、主治医にまず相談してください(Harvard Health, n.d.)。
- 主治医に、どういった種類の運動をしようとしているか伝えます。
- 特に、心臓疾患、糖尿病、高血圧といった慢性疾患を患っている場合は、主治医に確認をするのが重要です。
- 運動中にめまいを感じたり気分が悪くなったりしたらプログラムを中止し、主治医に相談しましょう。
資格をもった信頼できるインストラクターを探す
- 訓練を受けた専門のインストラクターが教えるエクササイズプログラムを探します。資格を持った専門家は、自分が教えているエクササイズについて、正しい姿勢、フォーム、適切な実施法を知っています。
- YouTubeで人気のあるフィットネスチャンネルがありますが、教えている人が運動を教える資格を持っていないことがあります。YouTubeの「About(概要)」セクションを見て、インストラクターが認定書を掲示しているか確認します。
- インターネットでインストラクターの名前を検索するのも、確認する方法の1つです。経歴や資格に関する情報を本人のウェブサイトに掲載している場合があります。
- 誰かに手伝ってもらいましょう。動画を出している人が全員資格を持ったインストラクターとは限らないため、その人の資格に関する情報を探すのが難しい場合もあります。興味のあるプログラムが正当なものかを判断するのに、ご友人やご家族に一緒に確認してもらうようお願いするのもよいでしょう。
友人と一緒にエクササイズをする
- 自宅でエクササイズをする場合でも、Zoomなどを活用してご友人と一緒にエクササイズをし、互いに意識し合うことで、繋がりを保つことができます。
上記に掲載した内容は、数多くある無料エクササイズプログラムのほんの一部です。こちらを活用していただき、新しい運動を見つけてもよいでしょう。なお、運動はクラスやプログラムという形で提供されるものに限定されません。ガーデニング、ウォーキング、庭仕事も同様に有益な運動です。
エクササイズするためのスペースを自宅に設ける
場所
- 運動用の空き部屋が1つなければ自宅で運動できないわけではありません。しかし、車庫など、エクササイズ専用のスペースがあると便利です。
- 部屋の一角を片付けて、運動用のスペースにすることもできます。そこに運動のための器具を保管するのもよいでしょう。
スペースと安全
- 運動用のスペースが、運動するのに必要な十分な広さであるか確認するようにしましょう。
- 例えば、ヨガをする場合、ヨガマットを広げるスペースがあるか確認します。
- 同様に、たくさん動き回ったり、手足を伸ばしたりする場合は、ぶつかったり、倒れたりするものが周囲にないか注意してください。
使用する器具について
器具の種類
- 通常、運動用の器具というと、トレッドミル、エリプティカル、または大きなダンベルを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、大きな器具は自宅で運動するために必要とは限りません。
- ヨガマット、ハンドウェイト、レジスタンスバンドなどは小さく、使わないときは簡単に収納できます。これらはTargetやスポーツ用品店、オンラインストアで購入できます。
- これらの製品を購入したくない場合は、器具のいらない運動を見つけるか、自宅にある代用品を探します。例えば、ハンドウェイトが必要な場合、水のボトルや缶詰などで代用できます。
- 座った状態での運動をしたり、バランスを維持する手すり代わりに安定した椅子を使用することも検討しましょう。
服装
- 服装運動中は必ず適切な衣服を着用するようにします。快適で動き回るのに適した服を選ぶ必要があります。
- 運動の種類に適した靴を履きます。
水分補給
- 運動する際は、いつもより多く動き汗をかく可能性があるので、運動の前後、最中に水分補給をすることが重要です。
- 水分補給をしっかりするために、水のボトルを手元に用意するようにします。
心身の健康維持には体を動かすことが大切です。だからこそ、生活習慣の一部として運動を取り入れる必要があります。自宅での運動は慣れる必要があるかもしれませんが、自分に合う運動を探す方法はたくさんあります。自宅での運動は、知り合いとバーチャルで一緒にするアクティビティにもなり得ます。繰り返しになりますが、新しい運動を始める場合は、必ず事前に主治医にご相談ください。柔軟に、新しいことに挑戦し、活動的で健康的な生活習慣を目指しましょう。
参考資料
Centers for Disease Control. (n.d.). Physical Activity and Health: A Report of the Surgeon General. Retrieved on July 14, 2020 from https://www.cdc.gov/nccdphp/sgr/olderad.htm
Harvard Health Publishing. (n.d.). Do you need to see a doctor before starting your exercise program? Retrieved on July 16, 2020 from https://www.health.harvard.edu/healthbeat/do-you-need-to-see-a-doctor-before-starting-your-exercise-program