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緩和ケアとは?

緩和ケアとは、重病や命に関わる病気だと診断された人々を対象とする専門医療です(Get Palliative Care, n.d. )。この特別なケアは、医師、看護師、ソーシャルワーカー、そのほかの専門家が一つのチームとなって、現在患者を担当している医師と連携しながら追加でサポートを提供します。緩和ケアに携わる医療専門家チームの構成は、個々の緩和ケアの内容によって異なります。緩和ケアは、病気の治癒だけを見るのではなく、症状とストレスの管理に特に重点を置いています。介護、生活の変化、事前医療計画(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)、精神的支援など、病気から生じる患者のニーズを考慮します。緩和ケアによるサポートは、患者のみならず、家族や介護者にも提供されます(Get Palliative Care, n.d. )。さらに、病気のどの段階にいる人でもこのサービスを受けることが可能で、特に治療を受けながら、緩和ケアを受けられることが多いのです(Get Palliative Care, n.d. )。

イギリスで1960年代初頭に誕生して以来、緩和ケアの利用は増え続けてきました(Harvard Medical School, n.d. )。緩和ケアが必要だったり、それによって恩恵を受けられる可能性があったりする人は、全世界で約4千万人いると言われています。しかしながら緩和ケアから恩恵を受けられる可能性がある人の内、実際にこのケアを受けている割合は14 %にすぎません(World Health Organization, 2020)。その原因は、人材やリソース不足と、緩和ケアが患者と家族に提供できる事柄に関する理解がまだ広まっていないことが挙げられます。緩和ケアは、一般的な医療では対処しきれない、いわゆる「医療のすきま」を埋めるのに役立ち、特に重い病気と闘っている人々にとって有用なリソースといえるでしょう。

緩和ケアがもたらすメリット

緩和ケアは患者とその家族の両方に様々なメリットを提供することができます。ある研究では、緩和ケアが重病患者の生活の質を向上できることが証明されています。さらに患者を介護したり支援したりしている家族も、自身の生活の質の向上を得られると言われています(Heath, 2016)。前述の通り、緩和ケアは患者のニーズに焦点を合わせます。病気と向き合う中、患者が必要としていることに目を向けることで、総合的に生活の質を向上させることが可能となるのです。加えて、緩和ケアは、痛み、吐き気、疲労感といった病気の症状の改善も提供します(Get Palliative Care, n.d. )。これらの症状と、闘病によるストレスに対処することで、可能な限り日常生活を通常通り続けられることを支援するだけでなく、将来入院する可能性を最小限に抑えられることにもつながると言われています(World Health Organization, 2020)。

さらに、緩和ケアは患者に関与するあらゆる人人間同士のコミュニケーションの向上を促し、全員が共通の理解を持つために役立つ可能性があります(Get Palliative Care, n.d. )。患者のニーズとケアのゴールの理解を通じて、チームが主治医と協力・連携し、ゴールに合わせた治療内容や選択肢を作ることができます。これにより、ケアの計画と治療に関して、患者の希望がより尊重されるよう促すことが可能となります。

緩和ケアVSホスピスケア

緩和ケアとホスピスケアの違いを理解することはとても重要です。緩和ケアもホスピスケアも症状の管理に焦点を合わせている一方で、緩和ケアは病気のどの段階でも利用できるとともに、その病気の治療処置と並行利用をすることが可能です。一方で、ホスピスケアが提供されるのは、治療的処置では助からなくなった時か、余命が6ヶ月になった場合が多いのです(Center for Hospice Care, n.d. )。

癒しケア

「癒しケア」はコミュニティに根ざした緩和ケア・プログラムで、Keiroとプロビデンス(Providence)が提携して提供されています。2017年に創設された「癒しケア」は、慢性疾患や重病を患っていたり命に関わったりする症状がある日系アメリカ人と日本語を話す高齢者に、文化に配慮した緩和ケアを提供します。日系コミュニティを対象にしたサービスはアメリカで初めてです。

「癒しケア」に関する詳しい情報はこちらのKeiroのウェブサイトでご覧ください。

まとめ

緩和ケアは、重病と診断されたり命に関わる症状があったりするあらゆる人々に役立つリソースです。この緩和に特化したケアは、患者のニーズと好みを最優先する追加のサポートです。そして患者とその家族の両方に提供することができます。しばしば混同されがちですが、ホスピスケアと緩和ケアは同じものではありません。緩和ケアは病気のどの段階でも利用でき、治療的処置とも併用可能だからです。「癒しケア」は文化に配慮した緩和ケアを、日系アメリカ人と日本語を話すコミュニティの高齢者に提供します。

出典

Center for Hospice Care (n.d.). Hospice & Palliative Care. Retrieved from. https://www.hospicesect.org/hospice-and-palliative-care

Get Palliative Care. (n.d.). What is Palliative Care? Retrieved from https://getpalliativecare.org/whatis/

Harvard Medical School Center for Palliative Care. (n.d.). History. Retrieved from https://pallcare.hms.harvard.edu/about/history

Heath, S. (2016). Palliative Care Effective in Boosting Patient Quality of Life. Retrieved from https://patientengagementhit.com/news/palliative-care-effective-in-boosting-patient-quality-of-life

Palliative Doctors. (n.d.). A Team Approach to Hospice and Palliative Care. Retrieved from https://palliativedoctors.org/team

World Health Organization. (2020). Palliative Care. Retrieved from https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/palliative-care