ストレスや社会的孤立のリスクが高まっている時には、自分自身の状態を確認して、ストレスの多い思考や感情から精神的に解放される空間を作ることが重要です。メディテーション(瞑想)とマインドフルネスは相互につながりのある修練で、これを組み合わせて実践することで、体と心がどのように感じているかに注意を向けることができます。これらは、お金もかからず、年齢層を問わず、どこにいても実践することができます。
このページでは、メディテーションとマインドフルネスを実践するためのエクササイズをいくつかお伝えします。しかし、これらのガイドラインは固定されたものではなく、ご自身の置かれた現在の状況と環境に合った方法を選び、必要に応じてやりやすいよう変更することが可能です。
メディテーションとマインドフルネスのメリット
研究によると、メディテーションとマインドフルネスには以下を含む様々な健康上のメリットがあります。
- メディテーションは高齢者の精神的衰えを遅らせる効果があることが明らかになっています。研究によれば、定期的にメディテーションを行っている高齢者では、集中力の持続時間、自己認識、記憶力などがより高く保たれていることが発表されています(Malinowski 2013)。
- 複数の報告書によると、マインドフルネスとメディテーションにより不安が低減されることが明らかになっています(Smart 2017)。
- 別の研究によると、マインドフルネスの実践と高齢者の血糖値の低減に関連性があることが指摘されています(Loucks et al 2016)。
- マインドフルネスには感情の柔軟性を高める働きがあります。感情の柔軟性とは、気分や周囲の環境の変化に対し、自らの感情を管理できる状態でいられることを指します(Smart 2017)。
- メディテーションを行うことで、「脳内ネットワーク」を強化することができます。脳内には、精神を集中するなどといった特定のタスクを行う際に活性化するネットワークが存在します。精神を集中させた状態でメディテーションを行い、これらのネットワークを繰り返し活性化させることで活性状態が保たれ、日常的に他のタスクへ注意を向けることができるようになります (Luders et al 2016)。
- マインドフルネスにより、著しいストレスを抱えている、または精神機能に衰えがみられる高齢者の過度の不安やうつのレベルが低減することがわかっています(Wetherell et al 2017)。
メディテーションとは? (Bushak 2016)
広義では、メディテーションとは精神を集中させる修練を指します。メディテーションは1週間に数回、あるいは毎日といった頻度で定期的に行われることが多いです。メディテーションは、大変柔軟なもので、何を得たいと考えているかに応じて様々な方法で行うことが可能です。例えば、テレビを見ている時、コマーシャルの時間になったら音を消し、CMを見る代わりにその数分間をメディテーションに当てることもできます。
メディテーションの実践
メディテーションは、柔軟性のあるものであり、正しいやり方というものは存在せず、自分に合ったものを実施することが重要です。以下の項目は、メディテーションを始めるにあたっての一般的なガイドラインです。他にやりやすい方法があれば、これらの手順とは異なったやり方も可能です(Winston et al 2018)。
- 時間を決めます。短時間から始めましょう。1週間に数回、2分から10分間のメディテーションから始めてみましょう。
- 場所を選びます。始める準備が整ったら、快適で静かな、誰にも邪魔されない空間を見つけましょう。
- 快適な姿勢で座ります。多くの人は、足の裏を地面に付けて椅子に座ります。またベッドで枕を支えにしたり、地面の上にクッションを置き、その上に座る人もいます。どのような姿勢を取るにしても、背筋をまっすぐ伸ばして座ることをお薦めします。まっすぐ座ることで、体と精神を集中させることができます。
- 呼吸に集中します。目を閉じる、または視線を下げ、意識を呼吸に集中させます。息を吐き出しそして吸い込みながら、それがどの様に感じられるかに、ということだけに注意を向けます。
- 気が散ってしまっても寛容に対処します。メディテーションの最中に別のことを考え始めてしまうことがありますが、これはよくあることです。別の考えをしていると気がついたら、ゆっくりと自分の呼吸に意識を向け直します。
- 練習あるのみ。精神を統一し続けられるようになるには時間が必要です。最初の数セッションでは気が散ってしまうこともあると思いますが、定期的な修練を積むことで、時間の経過とともに、集中力を高めることができます。
繰り返しになりますが、メディテーションには複数のやり方が存在します。上記のガイドラインは始めるにあたっての一般的な手法です。他のやり方を試してみたい方のために、一般的なメディテーションエクササイズを下記、いくつかまとめました。
ボディースキャン
これは、文字通り、心で体をスキャンする手法です(ゆっくり動くレーザースキャンのような)。ゆっくり、均一な呼吸をしながら、つま先から始めて、体の各部位がどのように感じているのかに意識を集中させます。足元の感覚を感じることができたら、次に徐々にふくらはぎ、太ももと意識を集中させる部位を上げていき、最後は頭のてっぺんまでスキャンします。呼吸を均一に保ちながら、不快感や違和感のある箇所がないか注意を向けます。
ウォーキングメディテーション(歩く瞑想)
これはじっと座って行うのではなく、歩きながら行うメディテーションです。いつもよりやや遅めに歩き、歩みに合わせて呼吸を調整し、吸って吐くリズムを見つけます。例えば、息を吸いながら2、3歩歩き、息を吐きながら3、4歩歩くなど、自分に一番あったリズムを試して探します。歩く瞑想では、どこへ向かうかについても意識を向けなければなりませんが、あくまでも呼吸と歩みに意識を集中させることが大切です。
ガイド付きメディテーション
ガイド付きメディテーションでは、別の人物がメディテーションセッションの中で何に集中すべきか音声指導してくれます。こうしたメディテーションは録音や録画された形態で提供されていることが多く、以下のようなサイトで探すことができます。
- YouTube:YouTubeでGuided Meditation for Beginners を検索すると、様々な長さの瞑想が提示されます。様々な選択肢の中から、ご自分にあったものを見つけてください。視覚的要素、扱う内容、インストラクターの声など、惹きつけられるポイントは、人それぞれです。
- 瞑想アプリ:携帯電話にInsight Timer アプリをダウンロードすると、録画された様々な無料のガイド付きメディテーションが表示されます。このアプリには、メディテーションの進捗状況を経過観察する機能も含まれています。
ポッドキャスト
ガイド付きメディテーションポッドキャストには、新しい内容を録音したものが頻繫にリリースされています。
- Hay House Meditationは、複数のポッドキャスターがガイドを務めます。The Meditation Podcastは、特に健康面や精神面での問題を抱えた人向けのメディテーションを扱っています。
- ポッドキャストは携帯電話のアプリから、または、パソコンから聴くこともできます。
マインドフルネスとは?(Jaret 2020)
マインドフルネスとは今この瞬間に起きている事柄に意識を集中させることを指します。これは私たち全員に元々備わっている能力ですが、日頃からこの能力を活用するには修練が必要です。例えば、お茶を飲んでいる時、完全にお茶に意識を集中させ、その香り、暖かさ、味わいを感情や思考の中に取り入れることでマインドフルネスを実践することができます。
瞑想に似ていると感じる方もいらっしゃるかも知れません。マインドフルネスはメディテーションの最中に実践する行為です。メディテーションで呼吸に意識を集中させる際、意識は呼吸に集中しています。これをマインドフルな状態といいます。しかし、マインドフルネスを実践するために特定の時間を設定する必要はありません。マインドフルネスは一日のどの時点でも実践できるものです。
マインドフルネスの実践方法 (Jaret 2020)
- メディテーションはマインドフルネスを実践するよい方法です。メディテーションを通しマインドフルな状態になれる方法を会得したら、1日を通してマインドフルネスを実践しやすくなります。運動が体力をつけるように、メディテーションはマインドフルな生活習慣を維持するためのエクササイズと言えます。
- マインドフルネスを毎日のルーティンに取り入れるには、まず完全に意識を集中できるアクティビティを1つか2つ選びましょう。そのためだけに自分の予定を変える必要はありません。1日の中で既に行っていること、例えば食事などを選びます。食事をするために座る際、食べている物、それがどのような味わいか、またあなたの心身がそれに対しどの様に反応しているかに意識を集中させます。思考が揺らいだら、意識をゆっくりと戻します。
- 読書もマインドフルネスを実践できる手段の1つです。時間をかけてお気に入りの文章を味わいます。ある一節に集中する場合は、読んでいる文字の理解だけではなく、周囲の状況やその瞬間自らの感情がどのような影響を受けているかに注意を払うようにしましょう(Bush 2018)。
マインドフルネスとメディテーションは、心身の健康維持を願う人にとって人気のあるアクティビティになりつつあります。最大のメリットは、ほとんどが無料で、手軽に探せることです。健康を維持する追加の手段として、毎日の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考資料
Bush, M. G. (2018, November 22). Three Simple Mindfulness Practices You Can Use Every Day. Retrieved from https://www.mindful.org/three-simple-mindfulness-practices-you-can-use-every-day/
Bushak, L. (2016, March 10). What’s The Difference Between Mindfulness And Meditation? Retrieved from https://www.medicaldaily.com/mindfulness-meditation-differences-377346
Jaret, P., Pal, P., Kuyken, W., Hunter, J., Sofer, O. J., PhD, B. G., & Newman, K. M. (2020, July 8). What is Mindfulness? Retrieved from https://www.mindful.org/what-is-mindfulness/
Loucks, E. B., Gilman, S. E., Britton, W. B., Gutman, R., Eaton, C. B., & Buka, S. L. (2016, March 01). Associations of Mindfulness with Glucose Regulation and Diabetes. Retrieved from https://www.ingentaconnect.com/content/png/ajhb/2016/00000040/00000002/art00011;jsessionid=1piwcqcymvnmv.alexandra
Luders, E., Cherbuin, N., & Gaser, C. (2016). Estimating brain age using high-resolution pattern recognition: Younger brains in long-term meditation practitioners. NeuroImage, 134, 508-513. doi:10.1016/j.neuroimage.2016.04.007
Malinowski, P. (2013). Neural mechanisms of attentional control in mindfulness meditation. Frontiers in Neuroscience, 7. doi:10.3389/fnins.2013.00008