メディアには様々な形態があります。現在は放送(ラジオまたはテレビ)、印刷物、インターネットを通してニュースを入手することができます。情報は非常にたやすく手に入り、オンラインで簡単に共有することができます。常に最新情報を把握しておくことは重要ですが、メディアに対する正しい知識を持ち、取り込む情報をどのように整理すべきかを知ることも重要です。情報が溢れている現在、メディアを正しく情報処理する「メディアリテラシー」を学ぶのは難しく、ハードルが高いと思うかもしれません。しかしメディアに対する正しい知識を身につけるのに、必ずしもテクノロジーに精通している必要はありません(Gillmor et al., 2020)。メディアリテラシーを身につけることは、メディアから情報を得るのにも、自ら情報を作成するのにも役立ちます。
情報を分類する - メディアリテラシーの第一歩
メディアリテラシーを学ぶ前に、受け取る情報の種類を把握しておくとよいでしょう。情報の種類を知ることは、その情報の伝える内容や、それが信頼できるかどうかを評価するのに役立ちます(Gillmor et al., 2020)。
- ニュース – 直接的な観察や報告から得られた事実に基づいた情報。この情報は通常、信頼のおける他の情報源をもって正しいことを確かめることができます。
- 意見 – 意見/オピニオンとは通常、特定の考えを提唱し、事実に対する個人的解釈に基づき結論を導き出すものです。
- 分析 -事実に基づく報告より作成され、またそのテーマに詳しい専門家の知識が組み入れられています。
- スポンサー付きコンテンツ – これは有料コンテンツとも言われます。メディアプロバイダーに料金を支払った組織または個人に代わって作成された内容です。
- 風刺 – この情報は事実に基づいたものではありません。多くの場合、皮肉やユーモアを誇張することで主張しています。
メディア消費 – 誤った情報を避ける方法
私たちはメディアを通し様々な形態のニュースに接します。そのため、見たり聞いたり、読んだりするものに対し懐疑的な視点を持つことが重要です。信頼のおける情報源やメディアでも、締め切りに間に合わせようと急いだり、ニュース速報を伝える際にミスを犯すことがあります。懐疑的な視点をもつことは大切ですが、不信感を抱く必要はありません。
誤った情報は、その情報を真実だと思い込んでいる人によって容易に拡散されます。また私たちは自分が賛同できる意見を探す傾向があります。これは「エコーチャンバー効果」として知られ、私たちが実際にどの程度情報を把握しているかに影響を与えます(Gillmor et al., 2020)。十分な情報を得るために、自分自身とは異なる視点を提供する他の情報源を見つける必要があります。幅広い情報を様々なメディアから入手することで、考え方を柔軟にすることが出来たり、自分自身の持つ偏見を認識したり、自らの仮定を見直すこともできます(Gillmor et al., 2020)。自分の考えと同じ情報や意見に取り囲まれている場合でも、手元に届いた情報を検証する方法を知っておくべきです。情報元の主張を確認し正確な情報を共有するには、SIFTテクニックを活用することをお薦めします(Gillmor et al., 2020)。
S – Stop(立ち止まる)
- ソーシャルメディアの投稿やニュース記事をインターネットで共有する前に、自分がその情報の発信元を把握しているか確認します。
- 感情を強く動かされる情報を見つけると、それを他の人にも届けたく思い、共有したい気持ちになるかもしれません。しかし、その情報が事実にしてはあまりによすぎる、信じがたい、奇妙である、または紛らわしいと感じる場合、その情報を共有するまえに立ち止まるべきだ、という指標になります。
I – Investigate(情報の出所を調べる)
- 手間はかかりますが、その情報の出所を確認します。簡単なインターネット検索で情報源を見つけることができます。
- その情報をどこで見つけたか、またそれがよく知っている人や信頼のおける組織からの情報かを自問してください。
- 「いいね」や「シェア」をたくさん獲得し、インターネット上で人気があるからといって、必ずしもその人や組織が信頼できるとは限りません。
F – Find Better Coverage(より優れた情報を見つける)
- 自分の見つけた情報に疑いがある場合は、信頼する情報元やサイトからも同じ情報が発信されているか探すようにします。
- Google検索で一番最初に現れたリンクを見ても必要な情報がすべて得られるとは限りません。Google検索には正確な情報を提示していない広告やウェブサイトが含まれている場合があります。
- 複数の信頼できる情報元やサイトが同じ内容を伝えている場合は、それが正確な情報である可能性は高いといえます。
T – Trace to Original (情報の元をたどる)
- 主張や引用に関しては元の情報をたどります。引用された研究に目を通したりそれらの引用が専門家や信頼のおける個人からのものであるかを確認します。
- 情報が誤って引用されていないか、または画像が編集されていないかを確認します。
- 情報を確認する際、見慣れない、怪しいリンクはクリックしないようにします。
SIFTテクニックを使いこなすには時間と練習が必要です。SIFTを上手に使いこなすことができれば、メディアからの情報を適切に評価するための、すべてのステップを踏む必要はなくなります(Gillmor et al., 2020)。さっと目を通し、その内容が信頼できるかできないかのサインを見つけることができるようになるでしょう。
スローニュースアプローチ
情報を受け取る際、私たちは常にその情報が何を伝えているかを吟味し、全てを鵜呑みにすべきではありません。これは大きな買い物をする前にとる行動と似ています。通常、最初に見たものをその場で買うことはしません。他の人の意見が書かれたレビューを読んだり、その製品の機能を調べたり、価格を比較するために他の場所を見て回ったりします。メディアに接する際にもこうしたアプローチを取ります。事実に基づいた情報は、事実を集めたり検証したりするのに時間がかかるため、噂や誤った情報のほうが素早く拡散されてしまうことがよくあります(Gillmor et al., 2020)。これに対処するため、スローニュースアプローチをとることをお薦めします。これは、あるテーマについて最初に見た見出しを読んでそのまま信じるのではなく、そのニュースの妥当性を検討し他の情報源でも確認できるか見て吟味する方法です(Gillmor et al., 2020)。
メディアの作成 -ソーシャルメディアでの作成、投稿、共有、コメント
私たちはメディアを通してニュースを入手するだけではなく、自分自身が作成者、発信元となる場合もあります。私たちは、ソーシャルメディアへ写真を投稿したり、他の人の投稿にコメントしたり、友人とニュース記事を共有したりします。大規模なメディアと比べれば差はあるかもしれませんが、私たちのは一人一人、ある意味メディア作成者といえます(Gillmor et al., 2020)。どのような種類のメディアを作成するにせよ、必ず次の事柄を念頭に置いておくとよいでしょう。
調査をする
- メディアを利用する際と同様、情報を投稿または共有する前に、調査を行います。
- そのテーマに詳しくなるほど、他の人により詳しく説明したり共有したりすることができます。
節度ある態度を維持する
- SNSなどを利用する場合、どういった素材や言い回しが許可されているかといったルールやガイドラインを理解するようにしてください。
- SNS上では自分が賛同できない投稿や主張を目にするかもしれないことを必ず念頭に置いておきましょう。
- 異なる意見や見解を持つ人に対しても常に節度を持って礼儀正しく接するようにします。すべてのことに同意する必要はありませんが、心を柔軟にし、他の人の意見にも耳を傾けるようにします。
- 他の人が投稿したものにコメントする場合、書く内容に注意します。こうしたコメントはほかの人も見ているものです。自分のコメントした内容次第では、周りからネガティブな反応が返ってくる場合もあります。
プライバシーとセキュリティを強化する
- 自分の機器のソフトウェア(携帯電話、ノートパソコン、タブレットなど)が定期的にアップデートされているか確認します。
- 自分に関係なさそうな、情報源がよく分からないリンクはクリックしないようにします。
- オンラインコンテンツまたはサービスの利用法について十分な知識を得た上で、利用するようにしてください。
メディアとの正しい付き合い方は、時間をかけて身につけることが必要です。基本的に、ニュースに接する際、私たちは見聞きしたものすべてを鵜呑みにしないよう最善を尽くすべきです。SIFTテクニックを実践することで、私たちは立ち止まり、調査し、類似の情報を探し、情報の出所をたどることができます。他の人の投稿・発言や共有した内容をさらに拡散、コメントしたりする前に、そのテーマについてまず自分自身で調査する必要があります。また、最新情報を把握しておくことは重要ですが、ニュースに接する量をある程度制限することを検討するとよいでしょう。毎日大量の情報を取り込む代わりに、ニュースに触れる時間を1日1時間程度にしたり、または週に1回だけわずかな量の要約されたニュースを確認するという方法もあります。次回ニュースを読んだり見たりする際には、このメディアリテラシーを身に着けるために練習してみてはいかがでしょうか。
出典:
Gillmor, D., Roschke, K., Sepessy, C., Shaugnessy, Q. (2020). Mediactive: How to Participate in Our Digital World [MOOC]. Canvas. https://courses.cpe.asu.edu/browse/cronkite/courses/cpe-cronkite-digital-world?utm_source=osher