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man cupping ear
画像はMedical News Todayより引用

聴力は多くの人にとっては当たり前に感じられる能力ですが、年齢を重ねるにつれて衰えることは珍しくありません。65歳以上の3人に1人が聴覚機能に何らかの問題を抱えています。(Anon, 2016a)そしてこの割合は85歳を超えると50%まで上昇しますが、聴力の低下は女性よりも高齢男性に多くみられます。(Anon, 2016b)将来自立した暮らしを続けられるよう、聴力を維持するために今何ができるかを知っておくことが大切です。

聴力低下の兆候

聴力の低下は段階的に起こり、その程度も様々です。聴力低下には、以下のような兆候がみられます。(Plotnick, 2018c

  • 話し相手の声が聞き取りにくい。
  • 頻繁に相手の言ったことを聞き返す。
  • 相手がいつもボソボソとつぶやいているように感じる。
  • 他人との交流の場を避けがちになる。
  • 耳鳴りがする。

聴力低下の危険因子

  • 遺伝:親に聴力低下がある場合、子供の可能性も高まります。(Clason 2019
  • 医薬品:聴力に悪影響を及ぼす可能性のある処方薬や市販薬もあります。(Anon, 2016b
    • 抗生物質、化学療法薬、ループ利尿薬、高用量アスピリン、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)等
    • 聴力に影響する可能性のある薬を服用している場合は、医師にご相談ください。聴力に影響がみられる場合には、別の医薬品の処方を相談しましょう。(Clason 2019
  • 職業:職業によっては、職場環境が原因で聴力低下のリスクが高まる恐れがあります。
    • 建設作業員、救急医療隊員、消防士、演奏家、軍人、製造および工場作業員等
  • 顎関節(TMJ)障害:TMJ障害は顎に影響を及ぼし、頭痛、耳痛、耳鳴を引き起こす可能性があります。(Cleveland Clinic, 2021
    • 顎関節症は耳詰まり感や耳閉塞感を起こし、聴覚に影響を与える可能性があります。(Peng, Yongxin, 2017

聴力低下によって考えられる影響

  • 社交性の低下:聴力の低下は、他人との交流の機会を避ける引き金にもなり得ます。
    • 話し相手に何度も聞き返すことに罪悪感や恥ずかしさを感じたり、重要なイベントに出席することにストレスを感じるかもしれません。
    • これによって社会的孤立が助長され、日常生活さらには家族や友人との関係にも大きく影響を及ぼす恐れがあります。
  • 負の感情とメンタルヘルス:
    • 社会との隔たりにより、聴力低化はメンタルヘルスにも影響を及ぼし、鬱、怒り、自尊心の喪失を引き起こす恐れがあります。(Anon, 2016; Clason, 2019; Packer, 2017
  • 老化という固定観念の助長:
    • このような二次的な影響も、老化というマイナスイメージをさらに助長する恐れがあります。例えば、聴力低下のみられる高齢者は、実際にはそうではないにもかかわらず、動きや頭の回転が遅い、身体的・精神的能力も低下していると決めつけられてしまうかもしれません。(Packer, 2017

聴力の健康を維持するためにできること

自立性を維持し、健康的な社会生活を維持するためにも聴力を健康に保ち、様々な活動に参加し続けることが大切です。

聴力低下には予防できる種類もあります。以下の予防措置例をご参照ください。

  1. 大きな騒音を避ける。一般的な安全策として、大音量や爆音を避けることがあげられます。イヤホンやヘッドホンで大音量の音楽を聴くことは、聴力にダメージを与える主要原因の一つです。音楽は適度なボリューム(通常最大音量の60%以下)に下げて聴くことや、1時間毎に5分以上耳を休めることも推奨されています。(Anon, 2018
  2. 聴覚保護具を使用する。大きな騒音が予想される場合は、聴覚保護具を用意してください。イヤプラグ(耳栓)は安価で手に入れやすい保護具です。使い捨てのフォームタイプのものや、耳の形にあつらえて作られたものを活用しましょう。大きな騒音に対しては、保護をより強化するノイズキャンセリング型の耳栓の購入も可能です。(Plotnick, 2018a)耳栓を耳の中に入れておく感覚を好まない方には、耳をぴったりとカバーして騒音を遮断するイヤマフ(耳当て)またはヘッドホン型の保護具という選択肢もあります。
  1. 運動と健康維持。聴力にも、健康的な食生活と定期的な運動を続けることが大切です。耳の細胞を良好に保ち、脳に信号を送り続けるためには、適切な血流が不可欠です。(Clason, 2019
  2. 定期健診を受けましょう。聴力は精神や身体の健康といった、生活の様々な領域に影響を与えることがわかっています。聴覚を良好に保つためにも、定期的に医師の診察を受けましょう。

聴覚は時と共に衰えることがあるかもしれませんが、予防策や保護手段を活用することで、聴力をできるだけ長く保持することができるのです。

資料

Anon. (2016a). Basic Facts About Hearing Loss. Retrieved from: https://www.healthinaging.org/a-z-topic/hearing-loss/basic-facts

Anon. (2016b). Caregiver Guide: Hearing Problems. Retrieved from: https://www.healthinaging.org/tools-and-tips/caregiver-guide-hearing-problems

Anon. (2018). 5 Ways to Prevent Hearing Loss. Retrieved from: https://www.nhs.uk/live-well/healthybody/top-10-tips-to-help-protect-your-hearing/

Clason, Debbie. (2019). Presbycusis: Understanding Age-Related Hearing Loss. Retrieved from: https://www.healthyhearing.com/report/52510-Presbycusis-understanding-age-related-hearing-loss

Packer, Lisa. (2017). How Hearing Loss Affects Seniors. Retrieved from: https://www.healthyhearing.com/report/52508-How-hearing-loss-affects-seniors

Plotnick, Brande. (2018a). Learn How You Can Prevent Hearing Loss. Retrieved from: https://www.healthyhearing.com/help/hearing-loss/prevention

Plotnick, Brande. (2018b). Noise-induced hearing loss (NIHL). Retrieved from: https://www.healthyhearing.com/help/hearing-loss/noise-induced-hearing-loss

Plotnick, Brande. (2018c). What Are the Symptoms Of Hearing Loss? Find Out Here. Retrieved from: https://www.healthyhearing.com/help/hearing-loss/symptoms

Smith, Melinda, Lawrence Robinson, and Robert Segal. (2018). Sleep Tips For Older Adults. Retrieved from: https://www.helpguide.org/articles/sleep/how-to-sleep-well-as-you-age.htm/

Peng, Yongxin (2017). Temporomandibular Joint Disorders as a Cause of Aural Fullness. Retrieved from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5545700/