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健康的な食習慣は心血管疾患、2型糖尿病、ある種の癌など、食習慣と結びついた慢性疾患の発症リスクを減らします(HHS & USDA, 2015)。また健康的な食習慣の維持は、体に必要な栄養素の摂取を助けます。食餌療法の流行や栄養に関するメディアの誤った情報が、食事と健康に関する知識の混乱を招いているかもしれません。しかし信用できる情報源からの科学に基づく研究が明確な指針を提供しています。そうした情報源を元に、高齢者向けの健康的な食習慣確率の為のガイドラインをまとめました。

マイ・プレート(MyPlate)ガイドライン

MyPlateは、各種食物グループの適切な摂取比率をお皿の図上に示したもので、健康的な食事を推奨しています。これはアメリカ農務省(USDA)によって、2015〜2020年のアメリカ人の食事ガイドラインを満たすツールとして推奨されています(HHS & USDA, 2015)。

MyPlateでは食品を、野菜、穀物、果物、タンパク質、乳製品の5つの食物群に分けています。それぞれの食品群をどれくらい摂取すればよいかを図で示しています。

お皿の図が示すように、最大のカテゴリーは野菜、続いて穀物、そしてタンパク質、果物、最後に乳製品となっています。各食品群の摂取量は、個人のカロリー摂取量により異なります。MyPlate Planをご覧いただくと、適量のカロリー推奨値や、各食品群からの摂取推奨量が確認できます。

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栄養価の高い食品を求める

こうした分量に加え、各食品群からどのような食品を摂取するかも重要です。MyPlateの各食品群から健康的な食品を選択するガイドラインを以下にまとめました(HHS & USDA, 2015)。

  • 野菜:野菜には、緑黄色野菜、豆、いも及びでん粉類など、様々なタイプがあります。多種多様な野菜を食べるよう心がけましょう。
  • 果物:加工され、部分的な摂取になるジュースやスムージーよりも、リンゴやバナナなど食物繊維を多く含む果物(ホール・フルーツ)を食しましょう。
  • 穀物:少なくとも摂取する量の半分は、玄米や大麦などの全粒の穀類や全粒粉で作られた食品にするよう心がけましょう。
  • タンパク質:健康的なタンパク源には、低脂肪肉、鶏肉、魚介、卵、豆、ナッツ、種、大豆製品が挙げられます。
  • 乳製品:無脂肪または低脂肪の乳製品を優先し、ビタミンDやカルシウムが強化された製品を選びましょう。

ガイドラインの多くは、栄養価の高い食品摂取量の最大化を目的にしています。「栄養価が高い」とは、固形脂肪、砂糖、精製でん粉からのカロリーに希釈されるのではなく、栄養素や健康的な要素(ビタミンやミネラルなど)が食品に凝縮されていることを意味します。特に高齢者には低カロリー摂取を求められることが多いため、必要な栄養素を摂取するには、上記のような栄養密度の高い食品を優先的に摂取することが大切です(NIDDK, 2020)。

栄養成分表示を読む(FDA, 2020a)

栄養成分表示は自分が何を食べるかを、食品に含まれる栄養素をもとに評価するのに役立ちます。表示は大まかに「Servings Per Container(容器に何食分が含まれるか)」「Serving Size(一食分の分量)」「Calories(カロリー)」「% Daily Value(一日摂取量の%)」の4つの部分に分かれています。

  • Servings Per Container (何食分が含まれるか)は、その食品パッケージに何食分が入っているかを示すものです。1パッケージには複数の分量が入っていることがよくありますが、栄養成分表示は一食分についての情報を表示しています。
  • Serving Size(一食分の分量) は一食分の分量を示すものです。この情報は、MyPlateの各食品群内の食品摂取量の測定に役立ちます。
  • Calories (カロリー)は、その食品の一食分のカロリー・熱量を示します。
  • % Daily Value (一日摂取量%)は、その食品に含まれる各栄養素の割合を示すもので、一日2,000 kcalの食事の推奨量を基準にしています。例えば、「Total Carbohydrate(総炭水化物)」の横にある数字が「20%」と記載されている場合、一日の炭水化物の20%が一食分に含まれることを意味します。
  • 一般的に、一日摂取量の数値が5%以下である食品の栄養素含有量は低い、20%以上は高いとみなされます。
画像: Center for Food Safety and Applied Nutrition (米国食品安全・応用栄養センター)(FDA, 2020b)

栄養成分表示:摂取すべきもの、制限すべきもの(FDA, 2020a)

高齢者には食物繊維、カルシウム、ビタミンD、カリウムを多く含む食品を摂取することが推奨されています。これらの栄養素は消化、骨の健康、心臓の機能、筋肉、神経系に重要な役割を果たしますが、多くの高齢者は十分に摂取できていません。

高齢者は飽和脂肪、ナトリウム、添加糖類を過剰に摂取する傾向にあるため、この3つの成分量が低めの食品を選ぶようにしましょう。高齢者は基本的にカロリーが高く必須栄養素が少ない食品は制限するよう心がけましょう。加糖飲料や固形脂肪(バター、ラード、マーガリン、ショートニング)で作られた食品、脂肪や塩分を多く含む食品は制限しましょう。

アジア系の料理には塩分が多く含まれる傾向があります。塩分過多の傾向にあるアジア系料理の減塩方法については、 JACLの “Facts on Salt” をご覧ください(英語のみ)。料理に塩分を加える代わりに、ハーブやスパイスで風味を加える工夫をしてみましょう。

栄養失調と健康的な食欲の維持

MyPlateが示すような健康的な食習慣を確立し維持することで、栄養失調も防ぐことができます。栄養失調とは、十分な栄養を摂取していない場合に起こる健康状態を指します。栄養失調に陥ると、急激な体重の減少、倦怠感、イラつき、食物や飲み物への関心の欠如などの症状が見られます。高齢者は食事制限、病気、社会的孤立、その他の健康関連要因により栄養失調リスクが高まる傾向にあります(NHS 2020)。

高齢者に栄養失調が蔓延しているにもかかわらず、医師や看護師からの診断がおりないことが多々あります。(Volkert et al 2010)しかし、栄養失調の基本的なチェックは自身でも行うことが可能です。体型指数(BMI)をBMI計算機を使い、確認する簡単な方法があります。一般的に、BMIが18.5未満であると栄養失調とみなされます。ご自身やご家族に栄養失調の疑いがある場合は、医師に相談してください。栄養失調は、基礎疾患に関連していることがあり、対処が必要です。

以下は、食欲増進と、健康的な食習慣のためのアドバイスです(Semeco 2017)。

  • 運動:毎日の軽い運動はカロリーの消費を増進し、消化の速度を早め食欲を高めます。
  • 調味料:年を重ねると味覚や嗅覚が弱まり、食欲の減退につながります。料理に風味を加えるために香りの強いハーブやスパイスを試してみてください。また駆風ハーブ、工夫スパイスと呼ばれる調味料には、膨満感を低減し食欲を刺激する作用があります。フェンネル、ペパーミント、ブラックペッパー、コリアンダー、ミント、ジンジャー、シナモンなどがその例です。
  • 食事のスケジュールを立てる:食事の時間を決めておくと、空腹を感じていなくても食事をしようという気になります。また、いつ食事の時間になるかを意識することで、何を食べるか計画をたてることができます。
  • 食事を交流の場にする:食事の時間が決まっていれば、他の人と食事をともにする計画を立てることもでき、食事の時間が楽しみになります。ご家族と一緒に食事をするよう心がけたり、Zoomでの食事会を計画してもよいでしょう。
  • 間食:一度の食事で食べられる量が少ない場合は、一日のスケジュールの中に栄養価の高い間食を取る時間を設けてみましょう。健康的なスナックの例には、果物、ナッツ、グラノーラバー、ヨーグルト、トレイルミックスなどが挙げられます。

水分補給について

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体が食物を消化し栄養を吸収するためには、栄養素の摂取に加え適量の水分が必要です。必要な水分量は活動量や他の身体要因によって変わってきますが、一般的に一日4から6USカップの水を飲むことが推奨されています (Harvard Health, 2016)。

次回、食事計画を立てる時にはぜひMyPlateガイドラインに沿って食品を選んでみてください。食事の準備をする際MyPlate Planの推奨量を確認し、食品パッケージの栄養成分表示を読む練習をしてみましょう。新たな食事計画を立てたり食事の摂取量を変更する前は、その変更があなたの健康状態にあっているか医師や栄養士に相談してください。また、食欲に影響を与える薬を飲んでいる場合は、その問題に対処するための提案やその他の選択肢がないか、医師に相談してみましょう。                                                                                                                                                   

Resources

Bobroff, L. B. (2016, June 07). MyPlate for Older Adults. Retrieved from http://edis.ifas.ufl.edu/fy1260

Dietary Guidelines for Americans 2015–2020 8th Edition. (2015, December). Retrieved from http://health.gov/dietaryguidelines/2015/guidelines/

FDA Center for Food Safety and Applied Nutrition. (2020, March). How to Understand and Use the Nutrition Facts Label. Retrieved from https://www.fda.gov/food/new-nutrition-facts-label/how-understand-and-use-nutrition-facts-label

FDA Center for Food Safety and Applied Nutrition. (2020, March). Using the Nutrition Facts Label: For Older Adults. Retrieved July, 2020, from https://www.fda.gov/food/new-nutrition-facts-label/using-nutrition-facts-label-older-adults

Facts on Salt: Asian Foods. (2013, June). Retrieved from https://jacl.org/wordpress/wp-content/uploads/2015/01/13101007_JACL_SodiumFactSheet_June2013-f.pdf

Harvard Health Publishing. (2016, September). How much water should you drink? Retrieved from https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/how-much-water-should-you-drink

Health Tips for Older Adults. (2019, October 01). Retrieved from https://www.niddk.nih.gov/health-information/weight-management/healthy-eating-physical-activity-for-life/health-tips-for-older-adults?dkrd=/health-information/weight-management/health-tips-older-adults

MyPlate Graphic Resources. (n.d.). Retrieved from https://www.choosemyplate.gov/resources/myplate-graphic-resources

Scotland National Health Service. Malnutrition symptoms and treatments. (2020, February 14). Retrieved from https://www.nhsinform.scot/illnesses-and-conditions/nutritional/malnutrition#about-malnutrition

Semeco, A. (2017, September 18). 16 Ways to Increase Your Appetite. Retrieved from https://www.healthline.com/nutrition/16-ways-to-increase-appetite

Volkert, D., Saeglitz, C., Gueldenzoph, H., Sieber, C. C., & Stehle, P. (2010). Undiagnosed malnutrition and nutrition-related problems in geriatric patients. The journal of nutrition, health & aging14(5), 387–392. https://doi.org/10.1007/s12603-010-0085-y