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全米のヘルスケアプロバイダーや関連団体は、高齢者の社会的孤立が増加していることに関して、懸念を示しています。全米退職者協会(AARP)によれば、現在50歳以上のアメリカ人のうち、およそ17%もの人が社会的孤立で苦しんでいるといわれています。
最近の研究によれば、寂しさを感じる高齢者は憂うつ、認知症、脳卒中、心疾患、高血圧の発生リスクが高まると報告されています。この健康被害はタバコを一日15本吸うことと同様のリスクがあり、早死にするリスクが30%増加します。社会的孤立は、高齢者に拡大しつつある問題として認識さているのです。
研究者は、社会的孤立を他人との接触がほぼ、あるいは完全に欠如している状態と定義しています。社会的孤立は寂しさの度合いや、社会との接触の頻度で測ることができます。

社会的孤立に陥りやすい要素
研究者によると、孤立や寂しさに関係するリスク要因は一人暮らしをしていること、行動範囲に制限があること、収入が低いこと、交友関係の輪が狭いこと、英語以外の言語を話すこと、少数民族に属することなどが挙げられています。そのため、一般的なアメリカ人と比較すると、私たちのコミュニティの高齢者は、孤立のリスクが高い可能性があります。
配偶者や親友が亡くなるという人生の説目を経験することも、孤立につながります。多くの研究では高齢者を対象者としてみていることがありますが、介護者や家族も孤立する恐れがあります。
介護者に見られる孤立の傾向
長期介護の担い手は、多くの場合、家族やまれに友人です。アメリカではおよそ6,570万人の無償でケアを提供する介護者は50歳以上であり、全米の介護者の全体のおよそ49%を占めています。特に慢性病患者を介護する介護者達は孤立に陥りやすく、患者と似たような健康問題の危険にさらされていると言われています。社会科学及び医学雑誌の記事によれば、アルツハイマー病を患う人の家族介護者は、特に社会的孤立に陥りやすいと述べています。
負担が重なると、 非雇用の介護者は人と人の社会的な繋がりを維持したり、社会的な活動に多く参加したりすることが難しくなります。介護者であることが直接社会的孤立につながるわけではありませんが、介護の提供に関する様々な要素が、結果として孤立という形にしてしまう傾向にあるのです。

コネチカット大学によれば、慢性病をもつ家族がいる介護者は、そうでない介護者よりもおよそ2.5倍近く孤立を経験しやすいそうです。さらに、別の研究によると、介護者にとって人との交流を促し、社会との交流の場を作る介入支援は、身体的・精神的な支援や財政援助と同等に重要だと示しています。
介入支援プログラムの構築へ
拡大するこの問題に対応するため、心理学者やソーシャルワーカー、国の政策立案者は様々な介入方法やプログラムを模索しています。現時点では、高齢者の中の孤立を予防するため、生活の様々な要素に焦点を当てて介入支援をしているものが多く見られます。
介入研究によれば、最も効果的なプログラムは客観的そして主観的のいずれか、あるいは両方の側面から見た社会的孤立の要素を軽減させるものだと分かっています。例えば、交流の質、あるいは回数を増やすなどの試みをしたりする方法です。
しかし、多くの研究者はより良い防止戦略を見いだすため、社会的孤立がどのように発生するかについて、より多くの研究が進むことを求めています。高齢者は様々な理由で孤立を経験するので、それぞれの状況・ニーズに対応しなければなりません。
高齢者とその介護者が良好な社会的関係を築けるよう、Keiroは他の団体と同じように、積極的に日系アメリカ人及び日本人コミュニティと協力し合い、様々な取り組みを進めています。人と人がつながりあうことができるクラスやカンファレンスの開催から、代替交通手段をコミュニティメンバーに教えるプログラムなどを通して、Keiroは社会的孤立の課題に対し、革新的・効果的な解決方法を探すべく取り組んでいます。