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文化的背景を配慮した緩和ケアと支援を提供する包括的プログラム
ロサンゼルス、2017年8月15日――高齢になるにつれ、買い物や通院といった日常的なことが難しくなります。言葉の壁があれば、生活はなおさら困難になります。さらに末期の病状や衰弱によって体が思うように動かなくなってしまえば、生活におけるハードルが多すぎて改善しようとするどころか「仕方がない」と言って諦めてしまいたくなるかもしれません。
南カリフォルニアの日系コミュニティに住む多くの高齢者は、彼ら独自のニーズに見合った医療や支援サービスが不足しているため、これらのハードルに日々苦労しています。
本日、Keiroとプロビデンス・ヘルス・アンド・サービス・サザン・カリフォルニア(Providence Health & Services Southern California以下「プロビデンス」)が、パートナーシップを組むことを発表しました。提携の目的は、進行性の病気や困難な症状を抱えながら生活している日系米国人および日本人高齢者に緩和ケアと生活支援を提供することです。プロビデンスは緩和医療分野のリーダーとして全国的に有名であり、Keiroは日系コミュニティの高齢者に保健・支援サービスを長年提供してきた豊富な経験を持っています。両者が協力することにより、プロビデンスの指導力とKeiroの経験を活用できるようになります。当提携プログラムの最終目標は、こうした高齢者の在宅での暮らしを支援して生活の質を高めると共に、本人が希望しない救急室の受診や入院を減らすことです。
この提携により、3年間の共同プログラム「Keiro-プロビデンス全人的ケア・プログラム(Keiro-Providence Whole Person Care Program)」を開始します。疼痛・症状管理、アドバンス・ケア・プランニング、介護計画、安全性の評価、精神的・宗教的支援、投薬、健康管理システムと代替療法、送迎など、ヘルスケアに関する意思決定に影響をおよぼす課題に、文化的背景を配慮しながら両者が協力して取り組みます。
サービスはコミュニティに根ざした方法で提供され、参加者に支援とケアを直接届けることに焦点をあてています。老人ホームや介護付き住宅(アシステッド・リビング)施設、介護施設(ケアホーム)、診療所などへの必要に応じた訪問;家庭訪問; 医師による24時間体制の電話相談とフォローアップ;また、コミュニティセンターや教会、お寺への出張サービスを通じて、潜在的利用者に手を差し伸べるアウトリーチ活動を行います。
このKeiro-プロビデンスによる提携プログラムは、日系米国人および日本人高齢者に、各人の文化的嗜好、ニーズ、人生観を考慮した緩和ケアと生活支援を提供することに焦点をあてる、米国で初めてのプログラムです。
「Keiroは50年以上にわたり、南カリフォルニアの日系コミュニティにおいて不可欠な存在として、幅広い保健サービス、教育、資源を提供して参りました」とKeiroの社長兼最高経営責任者(CEO)を務めるレオナ・ヒラオカ(Leona Hiraoka)は述べています。「私たちはコミュニティの高齢者の生活の質の向上に今後も力を注いで参ります。今回のプロビデンスとの提携によって、人生の最終章において深刻な状況に直面しているコミュニティ内の高齢者へ包括的な支援を提供し、経験豊富なチームと協力することにより、差し迫ったニーズへの対応が可能となります」。
グレン・コマツ(Glen Komatsu)医師は、プロビデンス・トリニティケア・ホスピス(Providence TrinityCare Hospice)および地域緩和ケア(Regional Palliative Care)の医務部長(chief medical officer)を務めています。「このような地域・グループに特化した緩和ケアと生活支援に力を注ぐのは、私たちのプログラムが初めてになります。プロビデンスからは今回医療・臨床の専門家がプログラムに参加します。プロビデンスが持つ幅広い緩和ケア分野における実績と専門性に加え、日系米国人および日本人高齢者のケアにおけるリーダーであるKeiroが持っている見識や視点を組み合わせることによって、コミュニティの特に高齢で重症な方々の生活の質を、文化に配慮したやり方で著しく改善できるようになります」と述べています。
トーランスにあるプロビデンスの施設を拠点に、新たに異なる分野から集まった5名から成る緩和ケア・チームが発足しました。コマツ医師に加えて、加州で生まれ日本で育ち、米国で医学部と医学研修を修了した日本語の堪能な八浪祐一・エドウィン医師も当プログラムのために沖縄からロサンゼルスに赴任し、指揮を執ります。八浪医師は日本とハワイにおいて10年間病院とホスピス医療に携わった後、今年6月に緩和ケアのフェローシップをロサンゼルスで取得しました。
「日本人高齢者の重病患者、特に英語が話せない方々は、自宅から一歩踏み出すことに躊躇する場合が多く、そのことが必要な支援の利用を妨げる障壁となっています」と八浪博士は言います。「私たちなら、彼ら独自のニーズに対して、文化に配慮したやり方対応することができます。高齢者が自宅で家族に囲まれて最期を迎えられるよう必要なリソースと支援を提供することができるのです」。
八浪医師とコマツ医師の他に、当プログラムの専任として看護師、ソーシャルワーカー、管理者とアシスタントが各1名ずつ、可能な限り日本語が堪能なメンバーを加えます。プロビデンスは専任チームに研修を提供し、プログラム期間中も引き続き指揮を執ります。プロビデンス・トリニティケア・ホスピス、エドムンド・R・アンド・バージニア・G・ドーク・センター・フォー・パリエイティブ・ケア(Edmund R. and Virginia G. Doak Center for Palliative Care)、およびインスティテュート・ フォー・ヒューマン・ケアリング(Institute for Human Caring)の幹部がその任務を担当します。プロビデンス・トリニティケア・ホスピス、プロビデンス・リトルカンパニー・オブ・メアリー総合医療センター・トーランス(Providence Little Company of Mary Medical Center Torrance)、およびトーランスにあるインスティテュート・フォー・ヒューマン・ケアリングは、米国全土における革新的な緩和・終末期ケアの提供者を表彰する権威ある「サークル・オブ・ライフ(Circle of Life)」賞を2017年に受賞した二つの団体の一つです。
プログラム担当チームは2017年8月17日から始まる3年間の導入期間に、数百人に及ぶ慢性疾患を抱える日系米国人および日本人高齢者とその介護者にサービスを提供する計画で、Keiroは170万ドル提供することを表明しています。プログラムへの参加に興味がある方は、Keiroとプロビデンスが運営する地域の電話ホットラインおよびコミュニティを基盤とするアウトリーチ活動を通じて連絡できるようになります。
プログラムを拡充し、より多くの方へサービス提供を可能にするため、当パートナーシップの全期間を通じて専門職のボランティアを追加募集し、研修を行うことを目指しています。対象に含まれるのは、医師、研修医と医学部の学生、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、コミュニティ内の聖職者です。
「Keiroとプロビデンスのパートナーシップは、ここ南カリフォルニアの人々の暮らしとコミュニティに大きな影響を与えることになるでしょう。さらに他の地域に広がるかもしれません。私はこの提携の拠点がサウスベイで開始されることを誇りに思います」とカリフォルニア州議会のアル・ムラツチ(Al Muratsuchi)下院議員は言います。「私は日系米国人であり、サウスベイ選出の議員なので、このプログラムが重い病気を患う日系米国人および日本人高齢者向けの医療・支援サービスの不足を補うことに焦点をあてていることを非常に嬉しく思います」。
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「Keiro-プロビデンス全人的ケア・プログラム」の詳しい内容や、当プログラムによるサービスの利用法については、Keiroの職員に電話にてお問い合わせください:(213) 873-5791。
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Keiroについて
Keiroは、日系米国人と日本人コミュニティにいる高齢者およびその介護者の生活の質を向上させるという理念の下、ロサンゼルス、オレンジ、ベンチュラカウンティを中心に活動するNPO法人。孤立、経済的困難、複数疾患および認知・記憶障害など、加齢がもたらす多くの課題や障壁に対して様々な支援を実施している。さらに多くの高齢者および介護者に手を差し伸べるサービスの拡充を実現するためKeiroは企業や組織と提携しているとともに、加齢がもたらす課題解決に向け、研究やイノベーションにも積極的に参加。Keiroはロサンゼルスに拠点を置く。詳しくはwww.keiro.orgへ。
プロビデンス・ヘルス・アンド・サービス、サザン・カリフォルニアについて
プロビデンス・ヘルス・アンド・サービス、サザン・カリフォルニアは、カトリック精神に基づいて使命を遂行する非営利の医療システム。プロビデンス・サザン・カリフォルニアは各種の受賞歴を持つ6つの病院と、プライマリーケアを行う診療所、応急処置センター、在宅ケア、トリニティケアおよびトリニティキッズ・ケア(TrinityKids Care)というホスピスからなる完全に統合された包括的ネットワークに加えて、プロビデンス高校(Providence High School)も運営する。プロビデンスは以下の地元の組織によって支持される:プロビデンス・ホーリー・クロス・メディカル・センター(Providence Holy Cross Medical Center、ミッションヒルズ)、プロビデンス・セント・ジョセフ・メディカル・センター(Providence Saint Joseph Medical Center、バーバンク)、プロビデンス・セント・ジョンズ・ヘルス・センター(Providence Saint John’s Health Center、サンタモニカ)、プロビデンス・ターザナ・メディカル・センター(Providence Tarzana Medical Center)、およびプロビデンス・リトルカンパニー・オブ・メアリー総合医療センター(トーランス、サンペドロ)。プロビデンスは3,400人あまりの医師を擁しており、プロビデンス・メディカル・インスティテュートおよびサウスベイ、ウェストバレー、サンタクラリタの医師グループなど、多数の医師のグループおよび個人の医療提供者を通じて、組織的なプライマリーケアと特殊医療を提供する。プロビデンス傘下の組織であるフェイシー・メディカル・グループ(Facey Medical Group)は、サンフェルナンド・バレー、サンタクラリタ・バレー、シミ・バレーでプライマリーケアと特殊医療を提供する。プロビデンスは2016年にセント・ジョセフ・ヘルス(St. Joseph Health)と合併し、プロビデンス・セント・ジョセフ(Providence St. Joseph Health)という新たな組織を創設し、7つの州で50の病院を運営する。詳しい情報はCalifornia.providence.org。
グレン・コマツ医師について
コマツ医師はプロビデンス・サザン・カリフォルニア(Providence Southern California)の地域医務部長、トリニティケア・ホスピス(TrinityCare Hospice)の医務部長、さらに、プロビデンス・リトル・カンパニー・オブ・メリー・メディカル・センター・トーランス(Providence Little Company of Mary Medical Center Torrance)の緩和ケア医長を務める。アリゾナ大学で生物科学の理学士号を取得後、アリゾナ・カレッジ・オブ・メディスン(Arizona College of Medicine)を卒業。カリフォルニア大学アーバイン校(University of California Irvine)小児科で研修医を務め、ロングビーチ・メモリアル・メディカル・センター(Long Beach Memorial Medical Center)、とミラー・チルドレンズ・ホスピタル(Miller Children’s Hospital)新生児科でフェローシップを修了した後、新生児専門医として開業。主にプロビデンス・リトル・カンパニー・オブ・メリー・メディカル・センター・トーランス(Providence Little Company of Mary Medical Center Torrance)の新生児科医長を務める。さらに、ダナ-ファーバー癌研究所(Dana-Farber Cancer Institute)、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham and Women’s Hospital)、ハーバード・メディカル・スクール(Harvard Medical School)付属のマサチューセッツ州総合病院(Massachusetts General Hospital)で、成人緩和ケアのフェローシップを取得。その後、ホスピス・緩和ケアを設立するためにプロビデンスに再赴任。
八浪祐一・エドウィン医師について
プロビデンスに加わる以前、八浪医師は沖縄にあるアドベンチスト メディカル センターの内科勤務医兼ホスピス部門の医長を務める。早稲田大学で物理学の理学士号を取得後、ロマ・リンダ大学医学部(Loma Linda University, School of Medicine)を卒業。ニューヨークの聖ルカ・ルーズベルト病院(St. Luke’s Roosevelt Hospital)で内科研修医を務める。また最近、ロサンゼルスの退役軍人病院/シーダー・サイナイ病院(VA/ Cedar-Sinai Hospital)でホスピスおよび緩和ケアのフェローシップを修了。日・英医学用語に堪能。