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メンタルヘルスの支援は様々な形で提供されています。最も一般的なものはカウンセリングや投薬になりますが、他の支援サービスも精神的な支援に役立つこともあります。KeiroとLTSCが提携しているプログラムの一環として、LTSCのKeiroメンタルヘルスプログラムは、低所得の日系高齢者の方に無料で提供されています。
サクラさん(仮名)はリトル東京サービスセンターから支援を受けている方です。彼女が、身体的、精神的な病に向き合うときに支えとなったメンタルヘルスカウンセリング、そのほかの支援サービスについて語ってくださいました。
治療と後遺症
サクラさんは2017年にがんと診断され、治療のため、手術や放射線治療を受けました。診断時、特に死を意識したことはなかったそうですが、検査、手術、治療を進める中でリンパや骨への転移が判明、ステージ4のがんであることが分かりました。がんは、治療を続けることで回復しましたが、手術痕の痛みに悩まされ続けることになりました。更には、放射線治療の後遺症によって、治療後3年も経ってから突然半身不随となってしまいました。
がんの治療が一段落し落ち着くと、サクラさんはなぜか死の恐怖という不安に突然悩まされるようになりました。日を追うごとに悪くなる病状に不安も伴い、2018年に重度の不安障害を発症します。そんな時、リトル東京サービスセンター(LTSC)の心理療法に出会います。以来、定期的にソーシャルワーカー、知念奈美子さんとの対話を通して解決策を模索するカウンセリング¹を2年半続けています。
サクラさんは処方された不安症の薬への依存の懸念もあり、最初からカウンセリングを受けたいと願っていました。「藁にもすがる思いでした。躊躇はなかったです。日本語で、無料で受けられるという所が本当に助かりました」と語ります。
癒しケア、クライアント・アシスト・ファンド、LT Eatsの支援
がんとの闘いによって、不安症だけではなく、手術痕の痛みや急な入院でかかった費用、更に多くの試練が彼女を待ち受けていました。そのような中でもKeiroやLTSCのプログラムの支援を経て一つずつ乗り越えていきました。
手術痕の痛みの緩和を目的にKeiroの癒しケア²に登録し、サービスを利用しました。回復する中、2020年3月には3年前の治療の後遺症で脊椎損傷になり、激痛の他、ある日突然、立ち上がることさえできなくなったため救急医療にかかり、入院します。退院後は介護施設に移動しました。急にかかってしまった入院費、さらに自宅に戻った際の介護費は、KeiroとLTSCのクライアント・アシスト・ファンドで一部を補うことができました。自宅に戻ってからは、コロナ禍においてお弁当配達プログラム「LT Eats」³のサービスも利用しています。
心の変化とメンタルヘルスサポートの大切さ
2年半の間で、サクラさんは病気や後遺症と闘い、どのような困難にも力強く向き合ってきましたが、その間精神的にも大きな変化があったそうです。
「不安障害の時は毎日死ぬのが怖かったのが、一転して半身不随になると、色々考えが変わりました。入院中にステロイド剤を使用していた時は精神的にとてもハイな状態が続いていたものが、使用中止に伴って、急激に抑うつ状態に陥り、死にたい、拳銃が手元にあれば死ねるのにという考えがよぎりました。本当に怖いです、精神的な病気というのは。口では説明できないほど、何かに追い立てられるような、すごい気持ちになります。押し寄せてくる、圧迫感というか、何かがワーッと。すさまじいものがあります」
LTSCの支援もあり、サクラさんは現在KeiroやLTSCの様々なプログラムに支えられ、前向きに治療に取り組んでいます。同時に、ソーシャルワーカーの知念さんは彼女の力強さに勇気づけられたと語っています。「立ち止まったりうずくまったりする人もいると思いますが、彼女は3年の間に2つも大きな困難を乗り越えられてきた方なんです。サクラさんは心の基礎体力を持っていらっしゃる方だと思います。私は本当にちょっとしたお手伝いをしただけです」
サクラさんは次のように語りました。「リトル東京サービスセンターとKeiroから本当にたくさんの支援を受けましたが、会う人が皆様本当に素晴らしい方々でした。アメリカでは残念ながら医療のことでつらい、残念な思いをすることが多くありましたが、癒しケアもメンタルヘルスの支援もみなびっくりするくらい素晴らしい方々で本当に救われました」
サクラさんは、心の健康は体の健康と同じくらい大切だと語ります。「崖で一生懸命ぎゅーって手を握ってくださって、本当に引き上げてくださったという感じです。こんなにひどい状況が変わるのか信じられなかったけど、変わったのもありましたし、カウンセリングに助けられたことが本当に多かったです。半信半疑に思う方も、とりあえず、相談をされてみることをお勧めします」
1. Keiroとリトル東京サービスセンターは2017年から様々な面で提携し、既存のバイリンガル支援サービスの拡張を推進してきました。その取り組みには、クライアント・アシスト・ファンド(他に頼れる先がない高齢者に資金援助を提供し、金銭的な窮地から抜け出せるよう手助けするプログラム)、そして心の健康への取り組み(特にうつ病や不安障害、統合失調症、妄想性障害等の症状に悩む低所得の日系高齢者を対象にカウンセリングサービスを日本語で提供)が含まれています。
2. Keiroの癒しケアプログラムはKeiroとプロビデンスが提携し、提供する緩和医療プログラムです。対象者は病を抱える高齢者です。複雑なアメリカの医療システムにおいて、病と向き合う際に追加の支援を提供するサービスです。詳細はkeiro.org/iyashi-careより。
3. LTEatsはKeiro, LTSC、リトル東京コミュニティ評議会(LTCC)がパートナーを組み、弱い立場にあるリトル東京在住の高齢者に食事を届け、同時にリトル東京のレストランビジネスを支援するプログラムです。2020年4月より実施中、6月末をもって終了。
注:LTSCでカウンセリングや心理療法(サイコセラピー)などといったメンタルヘルスサービスを提供するスタッフは、全員アメリカの大学院で専門的な教育及び訓練を受け、カリフォルニア州のライセンスを取得、もしくは取得のための実務訓練中のプロフェッショナルです。