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その通知はある日、突然届きました。

川島さん夫妻はアメリカで何十年も、なじみのあるアパートに 住んでいました。オーナーとも顔なじみで、 アパートのご近所付き合いも頻繁にしながら、夫婦で平和な退職生活を送っていました。

ある日、その長く生活していたアパートのオーナーが代わる連絡があり、その合意書にサインをしました。それから1週間後に英語の手紙が届き、当初その手紙はオーナー変更に伴うポリシーの改定だと、川島さん夫妻は考えていました。

「私はてっきり、『退去する場合は60日前に連絡をしないといけない』という通知だと思っていました」と振り返ります。

数日経ち、同じアパートの住人と話をした際に再度手紙を読み直すと、それは「60日以内に部屋を出なければならない」という内容の退去命令通知だったことが分かりました。

「簡単な通知一つだけで、部屋を退去しろと。この話を始めると、今でも感情が乱れてしまいそうなので勘弁してください。本当に今でも腹が立つんです」

二倍の家賃

途方にくれた川島さんは、以前から支援を受けているリトル東京サービスセンターに相談しました。そこで、周囲と比べると自分達も含めこのアパートの住人達はかなり安い家賃を払い続けていたことを知りました。

その後、新しいアパートの管理会社経由でそのオーナーに、「もし60日の期限以降住み続ける場合はどうなるのか」と聞いたところ、驚きの回答があったと川島さんは言います。

「家賃がほぼ2倍になると言われました。信じられますか?」

最初は何とかなると思っていた川島さんも、2倍と聞いて焦りを感じずにはいられませんでした。周りの住人も含め、混乱と同時に怒りが込み上げてきたといいます。

リトル東京サービスセンターのソーシャルワーカー、Sayo Hwangさんによると、この信じがたい家賃値上げの背景には、川島さん夫妻が住む市による家賃の統制(レントコントロール)が実施されていないことがあると言います。同様な問題に直面し悩むクライアントは川島さん夫妻以外にも多くいるとSayoさんは言います。

新しい住まい探しへ

そこから怒涛の2カ月を川島さん夫妻は経験しました。Sayoさんとともに安価な物件を探し、車のない2人は徒歩とバスで何軒も回りました。もし、期限の2カ月までに次のアパートが探せない場合はホテルでの一時生活も検討したほどでした。家賃がもともと低かったため、予算に見合う場所、また退職していたため、信用調査を行わずに済む場所を探し求めていました。

退去期限日の10日前に、ようやく川島さん夫妻のニーズに合うアパートを見つけることができました。ですが、ここから更なる困難に直面しました。新しい家に引っ越すと言うことは、川島さん夫妻の荷物を全て箱につめるなどの体力的に負担のかかる作業が待っていました。また、引っ越す際の新しいアパートの敷金及び最初の月の家賃を前払いしなければなりませんでした。

幸いなことに、リトル東京サービスセンターのソーシャルワーカーがクライアントアシストファンドを通じて、資金援助を受けられるように手配しました。この資金援助はリトル東京サービスセンターとKeiroとのパートナーシップによって提供され、急な金銭的支援が必要な高齢者の方に手を差し伸べるプログラムです。このプログラムの利用により、川島さん夫妻は無事にアパートの引越しと、最初の月の家賃の支援を受けることができました。

「本当に、Keiroとリトル東京サービスセンターから受けた恩恵は大きいです。これがなかったらどうなっていたか。費用も含めどうやっていこうか本当困っていました。今回のアパートのオーナー会社から受けたど薄情と、皆さんからのご厚情は一生忘れることはないです。」