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『老人ホーム礼拝』
「じいちゃん、ばあちゃんたちが喜ぶことをもっとしたいのです」。
そう話すのは、南加キリスト教教会連合(以下、南加キ連合)で世話人アドバイザーを務める平田ベッキー師である。
南加キ連合は、南カリフォルニアにあるキリスト教の教会、牧師、信徒の方々の宣教/伝道の働きを一緒に支援しようと集まった、およそ30の教会からなる団体である。彼らが取り組んでいるプログラムの一つが、 五十年以上続けているという、日本語による『老人ホーム礼拝』だ。これは、これまでのように教会へ行くことができなくなった一世の「じいちゃん」「ばあちゃん」たちのために、毎月三カ所(敬愛ロサンゼルスヘルスケアセンター、サクラガーデンズ、敬愛サウスベイヘルスケアセンター)で行われている礼拝サービスである。連合の教会が交代で実施している。平田師は、社会的孤立を減らす意味でこのプログラムが居住者にとってとても大切だと語る。この礼拝ではほかの居住者と一緒に過ごせる時間のみならず、宗派に関係なく日本の童謡などの歌も聞ける機会があるという。クリスチャンでなくても自分の部屋から出て参加し、一緒に歌を歌ったりすることができる。「いつも一人ぼっちで部屋にいるのは孤独で良くないですからね」と平田師は礼拝の必要性を強調する。
新しいチャレンジのきっかけとなった助成金
とはいえ、毎月欠かさず、しかも三カ所に定期的に訪問するのは大変なことである。 平田師によると、南加キ連合では、牧師先生の高齢化による人手不足の問題に直面していたという。そんな時に、Keiroの助成金プログラムのことを知り、何とか今後も継続していくための支援を得られないかを検討したのがきっかけとなった。 助成金を受けた最初の年に 、平田師は各教会に声をかけて若い世代から奉仕する人を募ることにした。「 牧師を目指している神学生や、宣教師として日本から来ている人など全ての人に声を掛けました。新しい試みでしたが、火がついたというか、ものすごいエネルギーがグワッーときまして。声を掛けて本当に良かったと思いました」と平田師。この助成金が新しいことにチャレンジするきっかけとなったそうだ。
助成金は、これらのサービスを、新しい世代が各施設にて高齢者へサービス提供できるよう支援している。礼拝では音楽も流れ、一緒に声に出して歌う機会を居住者たちも楽しみにしている。これらの集まりは毎月、お互いと交流し、また一緒に歌う機会を作り出している。
高齢者と若者の交流による相乗効果
礼拝には3施設合計で100人余りが参加している。その中心は一世だったが、最近は二世の方も顔を出すようになったとのこと。「 若い世代はバリアを持っていませんので、賛美歌に限らず日本の唱歌や童謡なども英訳して取り入れており、それがじいちゃん、ばあちゃんたちに好評なんですよ」と平田師 。施設に住む世代間の交流がもたらす利点についてこうも語る。「若い人にとっても、『じいちゃん』『ばあちゃん』にとって何が大事か、自分たちの役割に気づいたり、視野が広がると思います。」
シニアに対する日系社会の理解が薄いと感じていた平田師は、助成金プログラムで『老人ホーム礼拝』に若い世代のアイデアやエネルギーを吹き込むきっかけを作った。今ではそういった若者からプログラムの継続を望む声もあることから、「(若い世代に対して)少しでも啓蒙することができたかなと思います」と、 今後もチャレンジを続けていく方針だ。