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できるだけ長く、自宅で生活させてあげたい
デイビッドさんは仕事の傍ら、様々な役割を担っています。心暖かい夫であり二児の父であると同時に、ご自身の母であるさかえさんの介護も務めています。腰の悪化とアルツハイマー病の進行により外出が困難になりはじめた母親のケアの為に2016年に、デイビッドさん一家は彼女の家に移り住みました。
さかえさんはなるべく長く、自宅で生活したいと望んでいました。同時に、息子や家族にはなるべく迷惑をかけたくないとも思っていました。日本舞踊を自宅で教え続けていましたが、次第に自宅介護を採用せざるをえなくなりました。
アルツハイマー病が進むにつれ、デイビッドさんが母親を主治医に連れて行くことさえ難しくなりました。「運転すればたった二分の距離の血液検査一つでも彼女を連れて出るのは一大事でした。」と語ります。「車まで連れて行き、車に乗せ、運転して、到着すればまた車から降ろし…彼女も疲れ果ててしまいます。」
癒しケアチームと主治医との密な連携
そんな時、主治医から「癒しケア」を勧められました。緩和医療についてはよくわかりませんでしたが、試してみようと思いました。振り返ってみると、「癒しケア」を紹介してもらったタイミングもすごくいい時期でした。」と語ります。「癒しケア」チームとの最初のコンタクトはチームのソーシャルワーカーとの電話での会話でした。
「45分以上、彼女の病状や状況について話しました。思いがけなかったのは、彼女のケアに家族が何を求めているか、家族としてのゴールについて話したことです。」
最初の電話の後、Keiroの「癒しケア」担当医である八浪先生による、さかえさんの自宅訪問が始まりました。定期的な訪問を通じ、医者と患者としての関係を深めていきました。
当初さかえさんは自分の思っていることをはっきりと八浪先生に伝えられませんでした。ですが時間と共に、家に居る安心感も支えになり、自分の状態や気持ちを八浪先生に素直に伝えることができるようになりました。八浪先生とさかえさんの絆が深まったことにより、八浪先生もまた主治医の先生とより深くさかえさんの状況を共有することができるようになり、結果として通院回数を減らし、家で過ごせる時間も増やすことができました。
家族にとっての心の支え
デイビッドさんにとっても、癒しケアは心の支えだったそうで、気軽に電話一本で母親の状態について相談できるということがとても安心できたそうです。「私自身も健康状態があまりよくなかったので、彼らがいて本当に助かりました。」
癒しケアのソーシャルワーカーからも介護に関する有益な情報が家族に提供されました。またPOLST(生命維持治療に関する医師指示書、Physician Orders for Life-Sustaining Treatment)の作成も支援されました。この書類によって、さかえさんが自身で医療行為に関する希望を伝えられない緊急時でも、彼女の意思が伝わるように準備されました。
救急外来通いを防ぐ
ある朝、さかえさんの様子がいつもと違うことにデービッドさんは気づきました。彼女はベッドから落ちてしまったのです。パニック状態の中、デイビッドさんはすぐに「癒しケア」チームに電話をかけました。
幸い近くにいた八浪先生がすぐにかけつけてくれたので、救急車や救急外来を利用せずに済みました。救急外来通いを防ぐのはさかえさんやご家族の望みでもありました。
その後、さかえさんは軽い心臓発作を発症し、八浪先生からの勧めもあり、「癒しケア」プログラムからホスピスプログラムへ移行されました。
私たちのニーズ私たちのニーズと希望に耳を傾けてくれるチーム
「正直なところ、記憶がぼんやりとしています。母親の介護をして、自分の仕事をして、自分と家族をケアして…、本当に忙しい時期でした。振り返ってみると、どの順番で何が起きたのか、記憶が少しあいまいです。ただ一つだけ確かなのは、このプログラムが本当に助けになったことです。とてもきめ細やかで周到なサービスでした。」
デイビッドさんは、何よりも一番よかったのは、チームがさかえさんとデイビッドさんの声に耳を傾けてくれたこと、と語ります。「私たちが何を必要として、何を求めているのか、そこに耳を傾けてくれました。そして、私達が求めていたのは一途に安堵感(just a relief)だったのです。」
癒しケアについて:
https://keiro.org/jp/iyashi-care
癒しケア:患者さんの声:
癒しケア: 「ケアの専門家」に見守られて
「遠慮」の一歩先に