末期がんとの闘いがスタート

ミカさんがタダシさんに出会ったのはあるコミュニティグループがきっかけでした。交流が増え、知り合った少し後に、タダシさんは末期がんと診断されました。

薬と食事療法による治療を一年ほど重ね、新しい治療ができるまでに症状が改善されました。偶然にもその新しい治療施設はミカさんの家の近所でした。毎日の治療をしながら生きがいの仕事を続けるため、タダシさんは短期のルームメイトとして彼女のアパートで生活し始めました。

タダシさんは40年以上アメリカで生活していましたが、身寄りの家族はいませんでした。また英語が話せなかったタダシさんのため、ミカさんは友人としてサポートする日々が始まりました。福祉施設の職員としての経験を生かし、ミカさんは言語の壁があったタダシさんのニーズが満たされるようお手伝いしていました。

この新しく始めた治療によって、数値がすごく下がり、二人とも完治できると感じていました。しかしながら、しばらくした後、ガンが再発。数値に一喜一憂し、医療機関に振り回される目まぐるしい日々が始まります。抗がん剤治療に抵抗があったタダシさんは新薬の治療を探し始めます。

新しい治療を求めて

ようやく見つけた新薬は、一カ月1万ドルという高額なものでした。ミカさんはタダシさんの保険会社に問い合わせますが盛っていたプランでは費用をカバーできないと却下されてしまいます。様々な医者や機関に聞いて回った結果、専門医を通じて製薬会社がデータを入手することを条件に無料で受けられることになりました。

薬はしばらく効果がありましたが半年ほど服用したところでがんの数値は元に戻ってしまい、その時点で骨への転移が発覚しました。その影響で体の様々なところに痛みが出始めたので、ミカさんはメインの介護者としてタダシさんと一緒に住み始めることになりました。この間ミカさんは仕事を続けながら手伝い続けました。

その後たくさんの医療機関や保険会社に聞く日々が続き、二か月後にようやく新しい治療が見つかりました。しかしながらこの治療は血液が造られない副作用があり、結果的に体力低下につながり、後々輸血が必要になりました。

ミカさんはタダシさんが経験していた言語の壁についてこう語っています。「日本語だったら言いたいこと、できることがいっぱいあったのでしょうけれど、英語では伝えられない。私を経由してしか話せなかったので、全部表現できていなかったのではと思います。彼が保険会社に電話するのも、オペレーターと話すことができれば日本語の通訳を依頼できるのですが、最初にかけた時点での自動応答でまず何を言っているか分からないのでつまずくんです。なのでとにかくオペレーターが出てくるまで0を押し続けて、としかいえませんでした。」

さらに検査や輸血の予約も困難を期したそうです。骨に転移しているかの確認をするボーンスキャンだけでも予約が1ヶ月先、また外来の輸血センターに行くもすぐ輸血できず、順番待ちでした。体力が刻一刻と悪くなる中待たされる状況はとても歯がゆく、輸血においては、待っている間に体調が悪化してしまい、救急搬送されたこともあったそうです。

結果的に治療は体力上続けられないと判断したタダシさんは、ミカさんと話して、ホスピスケアを探し始めます。

たった一日の癒しケア

当時を振り返ってミカさんは、「刻一刻と悪くなる状況の中必死でした。保険会社、ドクターオフィスとのやり取りは、こちらがしつこくしないとちゃんとやってくれないので自分から何度も確認の電話をかけていました。ファックスを送っても届いているか電話して確認しないと、次のステップに進まないこともありました。本当にへとへとでした。」

ホスピスを考え始めた頃に、ミカさんとタダシさんは、治療のオプションとして緩和医療について知ります。Keiroオフィスに癒しケアプログラムについて問い合わせ、その後八浪先生から電話がかかってきたそうです。

「保険が関係ないといわれたときに飛び上がるくらいうれしかったです。八浪先生に出会ったのは彼が亡くなる一週間前でした。もっと早く出会っていればと思いました。先生にホスピスの説明も、彼が輸血できなくなることなどを丁寧に教えていただきました。その頃は本当に医者に対してあきらめていたので。私たち的には、最後にやっと、安心してゆだねられたね、と言う感じでした。」

最終的にタダシさんは癒しケアに登録していたのは1日のみで、その後日本語でサービスを受けられるホスピスケアへ移りました。その一日の間に八浪先生の電話が数回と、直接診察を一度受けました。ホスピスケアに移った1週間後にタダシさんは息を引き取ったそうです。

ミカさんは、日本語でスタッフと話せる大切さ、そして他の医者からは説明のなかったケアのオプションを知ることができたことが助かったと語ります。「もっと早く知っていたらね。本当に癒しケアが情報として広まっていくことが大事だと思います。もっと多くの人にしって欲しいです。」


本人の意向により仮名として掲載させていただいております。

癒しケアについて:
https://keiro.org/jp/iyashi-care

癒しケア:患者さんの声:
癒しケア:母と私、そして私たちのニーズに耳をかたむけてくれたチーム
癒しケア: 「ケアの専門家」に見守られて
「遠慮」の一歩先に