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「遠慮」は、日系アメリカ人コミュニティでも馴染みのある、日本特有の概念です。相手に気を配り敬意を示すことを尊重していますが、それは同時に、正直な意見や考えや行動を控えさせ、直接相手と話し合うことを避ける場合があります。相手が聞きたい内容を言わなければ、誰かの気持ちを傷つけてしまうかもしれない、と恐れているからかもしれません。
アジア諸国では、人々は口頭であまり相手にはっきり物を言わず対立を避ける傾向がありますが、他の地域では遠回しにせず、単刀直入に相手に言いたいことを伝えることが当たり前の所もあります。(Brett et al., 2013). しかし今のパンデミックにより、誰もが自分自身や家族の安全を守る、最善の方法を考えることを余儀なくされています。
私たちの生活習慣で変えなければならないことの一つに、「ノー」と言うこと、断る勇気を持つことが含まれてくるのではないでしょうか。パーティーに招待されたり、友人から集まろうと誘いが来ても、行くことに抵抗を感じる場合は、はっきりと断ることが大変重要になります。さらに、行く予定だったイベントでも、健康と安全上の理由により参加したくない場合もあるでしょう。不安定な今の時期、人と交流する社交「ルール」も変化し続けています。「参加できない」と予定を変更することを申し訳ないと思う必要はありません。
COVID-19は現在も確実に拡大しつつあります。レストランが開店して友達がランチに誘ってきたからといって、外出しなければならい、と感じる必要はありません。最終的には自分自身の決断であり、自分のために最も快適で安全だと感じる選択をすることが重要です。今は特に、招待の辞退や相手の気持ちを害することについて心配する時ではありません。周りの人も理解してくれる未曽有の状況です。「有難いですが今はまだ」または「次の機会に」というように招待を断りましょう。相手と会うチャンスを逃すことや参加しなかったことについて、罪悪感を感じる必要はありません。初めは、断る勇気が必要かもしれません。断り方のポイントをいくつか紹介します(How to Politely Decline, 2020)。
丁寧に
- 招待してくれた人に感謝しましょう。
- 招待を断る場合でも、主催者に招待してくれたこと、また、気を配ってくれたことに感謝することが大切です。
はっきりと伝える
- 相手が自分に同意しない場合にも感情的にならず、冷静に会話を続けるよう心がけましょう。意見が食い違っても仲違いする必要はありません。
- 安全で健康を保つ最善の方法は自粛することです。主催者が充分な安全対策をすると強調しても、快く集いに参加できないということを繰り返し伝えましょう。
- 断る理由についての細かい説明は不要です。また、なぜそれが自分にとって良い決断であるのか相手を納得させる必要もありません。
- 相手に対してはっきりと伝えにくい場合は、招待してくれたことに再度感謝して話題を変えるなど検討してみましょう。
理由は手短に
- 断る際は短く、端的に伝えます。
- 説明を長々続けると、言い訳を考え出そうとしているように見えることがあるので注意しましょう。
がっかりするのは当たり前
- 会いたい人と会えないのは誰にとっても悲しく、寂しいことです。
- 自身にとって最善の選択について引け目を感じる必要はありません。
- 断る際、直接会う心の準備ができていないことのほかに、相手のことを自分が気にかけていることや会えなくて残念だということも伝えましょう。
他の方法を提案
- 可能であれば、ZoomやFaceTimeを通してオンラインで顔を見て話すなど、対面より安全な代替案を提案しましょう。
- 日程を延期することを提案しましょう。
招待を断る方法の例:
- 「誘ってくれてありがとう。残念ながら私は今、外出したり友人や家族と会うことができません。」
- 「本当に楽しそうなイベントですね。しかし、私は現時点ではほかの人と集まる心の準備ができていません。」
- 「誘ってくれてありがとう。会えなくて本当に残念です。直接お会いするのはもう少し先かもしれませんが、Zoomで会えますか?」
- 「私のことを考えて招待してくれてありがとう。現時点では外出できませんが、いつか安全にお会いできるのを楽しみにしています。」
- 「_______に招待してくれてありがとう。子供達が私の健康や安全を考慮して、私に家にいるよう勧めます。近いうちに集まることができるといいですね。」
- 「誘ってくれてありがとう。しかし、ほかのグループや団体も集いを避けているので、集まらない方が良いと思います。皆さんにお会いできず寂しいですが、皆が安全で健康であり続けられるよう願っています。」
- 「素晴らしいイベントですね。招待してくれてありがとう。高齢者になるほど深刻な病状になりやすいと聞いてますので、私がこのイベントに参加することで病気になる、もしくは私が他の人を病気にするリスクを取りたくありません。」
- 「楽しそうなイベントですね。しかし、私は私たちのグループ(組織、教会、寺院、家族など)の全員が参加できればと思っています。_______の息子さん・娘さんは彼女を外出させたがらないので、代わりに電話会議かズーム会議を設定しましょう。そうすれば、皆が安全に一緒に話すことができます。」
特に親しい友人や家族が相手の場合、招待を断ったり辞退することは、最初はなかなか難しいかもしれません。友達と会えず寂しいかもしれませんが、今は健康と安全を優先する必要があります。高齢者や慢性疾患のある人は、COVID-19による深刻な症状のリスクが高くなります。外出やイベントへ参加した場合、そこに行って自分がどれだけ快適に感じるか考えてください。自分の安全と健康について終始心配するのであれば、人と会っても楽しい気分になれないでしょう。さらに、会えると期待していた友人や知り合いが、自分の健康状態のため、または家族からに家にいるよう強く言われて参加できないかもしれません。直接集まらずに安全に周りとつながるためにZoomなどのプラットフォームで集まると、より多くの人が参加できます。しかしながら、最終的に外出についての決断を下すのは自分です。断るのには多少の練習が必要かもしれませんが、辞退することに罪悪感を感じる必要はありません。
投稿日:2020年8月3日
Reference
Brett, et al. (2013). How to Argue Across Cultures. Retrieved from https://hbr.org/2013/12/how-to-argue-across-cultures
Galligher, A. (2020). How to Politely Decline Social Invitations to Events During COVID-19. Retrieved from https://wexnermedical.osu.edu/blog/how-to-politely-decline-social-invitations-to-events-during-covid19