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著:アイラ・バイヨック医学博士

もしもあなた自身や身近な友人や親族が、癌、心不全、アルツハイマー病等の深刻な病と診断されたら、戸惑いや先の見えない不安にさいなまれることでしょう。突然、予期せぬ困難な道のりを強いられるのです。見知らぬ土地で道に迷ったように感じるのも、無理もないことです。

近頃では治療方法の決断も複雑です。アメリカの医療制度は病気の治療という面では順調に機能していますが、難しい状況のさなかの患者や家族を導くためのコミュニケーションや、問題を未然に防ぐ機能が十分ではありません。自分の判断が正しいかどうかと不安を感じることも少なくないでしょう。

意思をはっきり伝える大切さ

大切なのは、あなた自身と家族の意思をはっきり伝えられるように準備をすることです。あなた自身や大切な人々が問題を回避でき、最善のケア(ベスト・ケア)を受けられるように、日頃私がアドバイスしているいくつかご紹介します。

まず重要なのは、あなたの病気の専門医を近隣で見つけること、そして次にまず大切なのは、あなたの病状の専門医を近くで見つけること。そして、その医師や医療チームと心を通わせて効果的に協力し合うことです。良い「ベッドサイド・マナー、患者との接し方」を全ての医師が身に着けているのが理想ですが、必ずしも医師が皆温かい人柄だとはかぎりません。本当に大切なのは、あなたのために本当に親身に考えてくれる医師だと、あなた自身が感じられるかどうかです。もしもそうでないとしたら、別の医師を探しましょう。信頼し、懸念無く接することのできる医師を見つけることは、あなたのケアに必要不可欠なのです。

次は、医療チームと効果的に連携するための基本的なポイントです。こちらが私のおすすめです。

  • 医師に質問したい事柄をメモしておきましょう。癌や記憶障害、心臓・肺・腎臓・肝臓等の専門医の診断を受けるのは勇気のいることかも知れません。投薬や症状、病気の治療に関する質問を全て覚えておくのは、容易ではありません。質問のリストを用意しておけば、大いに役立ちます。
  • 医師との面談には、誰かに同席してもらいましょう―配偶者、兄弟姉妹、成人した子供にサポートをしてもらい、医師との話しを一緒に聞いてもらってください。受診時の会話を録音するのも良いでしょう。
  • 医療記録のコピーを保管しておきましょう ― 特に、テストや生検(バイオプシー)の結果、検査報告書、通院歴、健康診断や退院記録です。あなたにはこれらを要求する権利が認められています。
  • 日々の症状と服用した薬の記録を付けましょう。

カンド・オピニオン(第2の意見)―さらには第3や第4の意見を聞いても良いでしょう。

深刻な診断に直面した際、最善の治療を得るためにセカンド・オピニオンを検討することも大切です。命に関わる病気の問題なのですから、ためらうことなく最善の医療施設とチームから、第2の―あるいは第3、第4でも!―見解(オピニオン)を入手してください。インターネット、地元の専門家、口コミをフル活用して、あなたにとっての最善の医師や医療施設を判断しましょう。

緩和ケア― 殆どの人に知られていない、最も重要な医学の進歩

治療法を検討中の方に強くお勧めしたいのは、緩和ケア専門の医師やチームからもアドバイスをもらうことです。

緩和ケアがホスピスから生まれたため、緩和ケアを受けることは諦めることを意味すると考えてしまう方が大勢いるようですが、そうではありません。近頃では「癒しケア」などのプログラムを通じて、緩和ケアは癌、心臓、肺、肝臓、腎臓、神経系の病の治療と併せて提供されています。

Iyashi Care team
癒しケアチーム

痛みや不快な身体症状の治療に併せ、食欲、消化、腸の状態・お通じ(全て重要)等の改善をサポートする臨床専門チームの協力を得ることで、人はよく眠れるようになり、、活動的になり、安心して過ごせるようになります。体も心も同時に改善されていくのです。

癌などの深刻な病状にある人々が病気の治療と併せて緩和ケアを受けることで、気分が良くなる傾向が高いのは驚くべきことではありませんが―時には、寿命が伸びることまであるのです!

終末期を迎えつつある人に自宅で提供される緩和ケアの延長を、ホスピスと呼びます。十分な終末期ケアを行うには、医療面の管理をし、介護者である家族をもサポートするホスピスが不可欠です。ホスピスの看護師、ソーシャルワーカー、医師は有能で、先を見越して行動し、敏速に対応してくれます。

覚えておいて下さい。あなたとあなたの愛する人々にとっての最善のケア(ベスト・ケア)を得ることこそが大切だということを。


著者について

医学博士アイラ・バイヨック(Ira Byock)はプロビデンス・ヘルス・アンド・サービス(Providence Health & Services)のインスティテュート・フォー・ヒューマン・ケアリング(Institute for Human Caring)の創設者兼最高医療責任者(Founder & Chief Medical Officer)です。ダートマス大学医学部(Dartmouth’s Geisel School of Medicine)の現役名誉教授であり、『Dying Well』(1997)、『The Four Things That Matter Most』(2003)、および『The Best Care Possible』(2012)の著者です。詳しい情報はIraByock.orgのホームページでご覧いただけます。