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アルツハイマー病は特に高齢者に多くみられる病気です。80代や90代と長生きすればするほど、アルツハイマー病やその他の認知症にかかるリスクは高くなります。また、高齢者の10人に1人は何らかの認知症を患っています。
カリフォルニアはアジア系アメリカ人の高齢者が全米で最も多く生活しており、今後もその数は増加していくと見込まれています。しかし、一方でアジア系のコミュニティに住む人は多くの場合、認知症の症状について専門医に相談することを躊躇するといわれています。研究によれば、患者が症状を打ち明けられない理由の一つに、世間的にマイナスなイメージがあることが挙げられています。認知症の兆候は、時には精神疾患と誤って解釈され、否定的な目で見られることもあり、その結果、必要な助けを求めることができないのです。
現在、コミュニティ内でこのイメージを変えてゆくためにアルツハイマー・ロサンゼルスでは、『介護の顔(Faces of Caregiving)』という革新的な教育ビデオシリーズを作成し、コミュニティに働きかけています。Keiro助成金プログラムの支援によってこの団体は、人々の認知症への理解を深めると共に、認知症であることは恥ずかしいことではないという考え方を広めようとしています。
『介護の顔』
この動画シリーズは、認知症を患う高齢者を介護する日系アメリカ人や日本人が、それぞれユニークでパワフルな体験談をシェアすることにより、似た状況にいる方々のために支えになったり、参考になるアドバイスを提供することが目的で立ち上げられました。
「介護の顔」という意識向上と教育を目的としたこの取り組みでは、それぞれの体験談を語るストーリーテリングという手法を活用しています。南カリフォルニアの複数個所で行われた上映会では、コミュニティリーダーや参加者、インタビューを受けた介護者の家族や友人たちが映像を介してそれぞれの経験を聞き、また自身の体験をシェアできる機会が設けられました。
このイベントの対象は現在介護をしている人だけでなく、将来介護をする立場にある人も含まれており、自身が介護者となった際に知っておくと良い知識や情報などを学べるような構成になっていました。
変化をもたらす為に
アルツハイマー・ロサンゼルスのアジア・太平洋地域系担当のマネージャーであるアンジー・イェ氏(Angie Yeh)は祖父の最期を直に看取った自身の経験から介護の困難さを体験し、次のように語っています。
「今の時代だからこそ革新的な方法で伝えることが大切だと感じたことからこの『介護の顔』ビデオシリーズは始められました。一つの革新的な方法として、今まで使用されたことのないツールを使ってみました。」
体験談が多くの関心をひきつけ、意義深いものだったことは、上映会の会場となったガーデナ平原日本文化会館(Gardena Valley Japanese Cultural Institute)の多目的室が人で溢れかえった光景が物語っていました。上映会は特に日系アメリカ人や日本人の介護者にとって、ビデオに出演している介護者の経験に共感するだけでなく、他の参加者と様々な体験を共有する良い機会でもありました。
体験談
日英両語で制作されたインタビューシリーズ『介護の顔』は、認知症を抱えた大切な人への介護という共通の軸をベースに、様々なテーマを深く掘り下げています。
タモ
タモさんの奥さんはアルツハイマー型認知症と診断を受けるまでは、家計や家事を担ってきました。症状が重くなったころ、妻の介護に加えてタモさんがその役割も担わなければならなくなりました。タモさんにとって妻の介護は結婚生活の延長であり、人生の一部だと語ります。
インタビューの中でタモさんは、家族の介護は女性の役割だという典型的な考え方で介護に対する偏見を持って育ってきたことや、家族の一員が認知症を患っていることを特に男性はなかなか受け入れられないこと、そしてこういった偏見を彼がどのように克服したかについて語っています。
「難しいかも知れないが、全く恥ずべきことではないことを理解してほしいのです。より多くの介護者が助けを求め、介護者のためのサポートが社会にあることを知って欲しいです。」とタモさんは述べました。また、介護者自身の心と体の健康に気を付けることも重要であることを理解してほしい、と語りました。
アリス、ジェーンとイレーン
認知症を患った母親を、三姉妹は互いに支え合いながら介護してきました。母親は、当初はアルツハイマー型認知症と診断を受けていましたが、数名の医師の診察後、最終的に脳血管性認知症と診断されました。
彼女たちのインタビューでは、アルツハイマー病だけが認知症ではないということが描かれていました。三人共、認知症との関わりは今後も続いていくと考えています。
母親のことを思いながら、アリス、ジェーンとイレーンさんは病気をより理解するための研究に参加し、社会貢献し続けています。介護者が明るさと喜びを忘れないことで、高齢者が美しく年を重ねる助けとなることを語っています。
その他の体験談
この他にも、コミュニティの中でのサポートに頼ることの大切さを共有してくれたジェーンさんや、知識は介護者に力を与えてくれることを語るコリーさんのインタビューも掲載されています。本シリーズに出演された方々は、今も視聴者から感謝のメッセージが寄せられているそうです。ストーリーテリングは多くの知識が得られるだけではなく、共通の経験で思いがけず、新しい人とのつながりができるきっかけにもなります。
本シリーズは、アルツハイマー・ロサンゼルスのウェブサイトや、YouTube、そしてソーシャルメディアの各チャンネルから閲覧することが可能です。
アルツハイマー・ロサンゼルスは、南カリフォルニアに住むご家族の方々の文化やそれぞれのニーズ、状況に配慮したサービスを提供し続けています。