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私たちのコミュニティで、長年にわたってKeiroの歴史を支えてきた方達の中に、荒谷サカエさんと荒谷リンダさんがいらっしゃいます。Keiro創設者の1人である故荒谷ジョージ氏の夫人、サカエさんと娘のリンダさんはKeiroの草創期から荒谷氏に寄り添い、長年Keiroの進歩を共にそばで見ていらっしゃいました。創設から60年を経た今、Keiroの創設を思い立った荒谷氏の閃きとビジョンについて語っていただくと共に、今日に至るまで受け継がれてきた荒谷氏の『レガシー』についてどのように考えていらっしゃるか、インタビューしました。

家庭と海外から得た着想

サカエさんはKeiroの草創期を振り返りながら、Keiroを創設するというアイデアの由来は和田フレッド氏が南米に旅行した際に発見した事からだった、と話してくださいました。和田氏はそこで日本人高齢者向けの介護施設を視察して、着想を得たとのことです。「フレッドは帰国後にジョージに電話をかけてきました」とサカエさんは語りました。「そして2人は口を揃えて、これはロサンゼルスに持ち帰るべき最高のアイデアだ、と言い合いました」。その時から2人とほかの創設者たちは、Keiroを創設するための資金集めとコミュニティの支持の取りまとめに乗り出しました。

またサカエさんは、荒谷氏の両親への思いがKeiroを創設する動機になったとも指摘しました。「両親は彼が若い時に亡くなりました。両親に何か特別なことをしてあげたかった、と彼が口ぐせのように言っていたのを覚えています」と彼女は言いました。「このロサンゼルスに日本人が大勢いると聞いていたので、フレッドが連絡をしてきた時、これこそ正にコミュニティの為に自分がしたかった事なのだ、とジョージは感じたのです。」荒谷氏は自分の両親のことを思いながら、他の創設者たちと共にKeiroを設立し、私たちのコミュニティにいる高齢者を世代を超えて支援していきました。

Keiro50周年記念の際の荒谷ジョージ氏

世代を超えて共に成長する

リンダさんは子どものころから、Keiroに関するビジョンを家の中で父親から聞いていたのを覚えています。「私が中学生か高校生の頃、父は夕飯の食卓で、自分が大切だと思う事柄について話をしていました。日系二世は社会にかなり溶け込んでいるが、一世は食べ物でも行事でも[日本]文化をとても大事にしている、と言っていました」と彼女は回想しました。一世の世代にこうした文化が存在していることに気付いた荒谷氏は、文化に配慮した高齢者介護施設こそがこの世代のニーズに応える解決策だと考えました。リンダさんは次のように述べています。「一世の高齢化につれて変化するニーズと、必要とされる施設でのケアこそが、彼が取り組むべき課題だったと感じていたに間違いないと思います。そこからKeiroがスタートし、彼はその課題に本格的に取り組みました。」

その当時荒谷氏は、自分が見出したコミュニティのニーズに関するビジョンを追求しつつも、高齢者層のニーズというものは世代が変わるにつれて変化する、ということも理解していました。リンダさんは次のような話を教えてくれました。「父と何度か会話をしたことを覚えています。私が当時『パパがこれを1世のためにやっているのだとしたら、私が年を取った時はどうなるの?そしてもっと後の世代の、私の子どもたちの場合はどうなの?』と聞きました。すると父はいつも、それは自分の手が及ばない事柄だから、その時になったら組織が向き合わなくてはならないんだよ、と言っていました。彼は常に物事を現実的に見ることが得意でした。けれどもその当時彼が考えていたのは、とにかくこれをスタートさせることだったのです。」

荒谷ジョージ氏の『レガシー』を次世代へ

長年、時代とともにコミュニティの変化に合わせて進化していったKeiroを目の当たりにしてきたサカエさんとリンダさんは2人とも、荒谷氏のビジョンは今日のKeiroに受け継がれていると語ります。「この数十年を振り返りますと、創設者たちの夢と願いを叶えるべく、Keiroは本当にすばらしい仕事をしてくれたと思います。」とリンダさんが言うと、サカエさんも頷きました。「もし父が今日ここにいたとしたら、Keiroはして欲しいと願っていたことをすべてやり切ってくれている、そう言うと思います。」

これらの変化が今後Keiroをどこに向かわせるのか、コミュニティの高齢者を支援する未来についてリンダさんはこう語りました。「Keiroは[高齢者へのケアについて]とても上手にやっていると思います。なので、現在やっている事柄をぜひこれからも継続して欲しいと思います。」と彼女は言いました。「そして、今サービスを提供する人たちに合わせるため、さらに変化する必要があるかもしれません。例えばですが、四世はとても多様性のある世代です。ここから先は違う時代で人も違い、多様性が増えてきています。まさに新しい章の始まりといえるでしょう。」リンダさんとサカエさんはこれらの希望を持ちつつ、荒谷氏がKeiroに残したレガシーが、新しい章に刻まれるごとにこれからどのように紡がれていくか、楽しみだと述べていました。