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Keiroではコミュニティ内のお友達に直撃インタビューを実施しました。人とのつながりの大切さ、彼らの語る友情の秘訣について伺います。

人生をより楽しく、豊かにしてくれるものを一つ挙げるとしたら、それは何だろうか?

古代ローマの政治家であり哲学者でもあったキケロは、こう言っている。“人生から友情を取り去ることは、世界から太陽を取り去ることに等しい”と。『友情』は人生を輝かせてくれる光のような存在ということか。

今回ご紹介するのは、お互いの人生を照らし合うように友情を育んでいる山内繁子さん(81)と前田洋子さん(73)だ。共に沖縄県出身ということで、同郷ならではの友情の秘訣などを伺った。

二人の共通点が友情をさらに深める

二人が最初に出会ったのは20年ほど前で、前田さんが当時沖縄県人会の事務局で働いていた頃。「理事会やお琴のクラスなどで一緒になることが多かったのですが、その時は仕事が忙しくて個人的なお付き合いはなかったんです」と前田さん。現在のように親しくなったのは、前田さんが転職先の日系クレジットユニオンをリタイヤしてからで、4、5年前からだそう。きっかけは前田さんが山内さんと同じガーデナバプテストチャーチに通うようになったこと。「リタイヤして時間の余裕ができたのもありますし、主人が3年前に亡くなって寂しかったから」と前田さん。一方、山内さんも「チャーチの日本語部に前田さんが来るようになってから、もっと親しくなりました」と当時を振り返る。

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顔見知りだったとはいえ、親しくなってからまだ4年の間で確固たる友情が芽生えた大きな要因について尋ねると「やっぱりうちなーんちゅ(沖縄県人)」と前田さんは即答。「いろいろな面で気が合うってことでしょうね。気を大きく持って理解し合っているから」と続けた。 また山内さんも「同郷だし、お互いハワイ二世と結婚したこと、同じ信仰を持っているということも強みです」と互いの共通点が、友情を深める要因になっていると言う。実は山内さんも23年前にご主人に先立たれており、共に未亡人でもある。

長く付き合い続けられるのは、沖縄の “ちむぐくる”精神のおかげ

前田さんは沖縄県人の気質を、沖縄の言葉で「“ちむぐくる(肝心)”と“ いちゃりばちょーでー”」と表現してくれた。 “ちむぐくる”とは“思いやりや助け合いの精神を持つ”という意味で、“ いちゃりばちょーでー”は初めて会ってもすぐに打ち解けて兄弟のような親近感を持つという意味。 山内さんも「 心と心の付き合いよね。そして助け合い。沖縄言葉の“ゆいまーる”も 、相手が困った時には助けるという神様の教えと同じ。だからいざこざがなく、長い付き合いが続けられるんです」と説明する。 二人によると、模合(もあい)という沖縄地方特有の金銭的相互扶助の習慣も、“ゆいまーる”から始まったとのこと。他県では 頼母子講(たのもしこう)や無尽講(むじんこう)とも呼ばれている。「気持ちをオープンにしてお互いにないところを助ける、それが沖縄の人のモットー」と山内さんは語る。

コロナの影響で変化する友人との過ごし方

新型コロナウィルスによる自粛生活が始まる前、山内さんと前田さんが 楽しみにしていた集まりがある。一つは毎週10人ほどのお友達が集まる『お茶飲み会』だ。前田さんが通っているタイチのシニアクラスの後、Pacific SquareにあるTokyo Central内のコーヒーショップで2時間ほどおしゃべりを楽しむのだそう。「山内さんはタイチのクラスには参加されていないんですけど、皆さんから是非来て欲しいという要望があって、私が連絡係として彼女にお電話してお誘いしているわけです」と前田さん。話題豊富な山内さんはその場を楽しませてくれるので、大歓迎されているそうだ。

もう一つは沖縄県人会のシニアの集い“すりーじゅりー ”である。“すりーじゅりー ”はKEIROの助成金プログラムの支援を得て昨年から始まったもので、ランチのお弁当が提供された後、沖縄の歴史や文化を紹介するプログラムなどが用意されている。「これまでは近隣の人としかお付き合いがなかったのですが、すりーじゅりーが始まってからは遠方から出て来られる方や、今まで知らなかった人たちとも、出身地や趣味、旅行の話などして打ち解けて、つながりができました」と山内さんは嬉しそうに話す。 現在コロナの影響で、すべての集いは中止になっているが、それまで毎月行っていた “すりーじゅりー”の再開を、二人とも心待ちにしているという。

それぞれが自宅待機中の現在、「みんなに会えなくて、寂しいねー、寂しいねー」とお互い電話で話しながら、自粛期間が終わるのを我慢しながら待っているというお二人。そんな中でも二人の交流は続いている。山内さんの育てた野菜や花を前田さんがマスクをして頂きに行ったり、前田さんが作ったケーキや日本食をおすそ分けしたりしているそうだ。「マスクをして、お互い距離をとって、ほんのちょっとお話して、お顔見て帰るだけ。でもお友達が近所に4、5名住んでいるので、みんなで助け合っていますよ」と、それぞれが出来ることをして過ごしていると言う前田さん。山内さんも「情報交換したりするのは楽しいですよ。沖縄県人会のグループですから、言いたい放題(笑)。何も隠すことがないし、遠慮しないで色々なことが言えるから。和気藹々でとっても開放的」と楽しそうに話す。

友情の秘訣は真実を語ること

友情を保つ秘訣は「信頼し合っていること」と二人は口を揃えて言う。信頼し合うには「真実を語る事ですね。自分を飾らないで自然のままに言うのが一番大事です」と山内さんははっきりと言う。前田さんも同意見で「自分が困っている時に何も隠さずに話せるのが友達。あの人に電話したらまずいかなと思うような考えはないんです」と二人の考え方も明瞭でズレがない。

“親友はあなたが選べる家族なの”と言ったのは、かの大女優、オードリヘップバーンだが、山内さんと前田さんも、おおらかな心を持つうちなーんちゅ同士、友情という心でつながる『心友』となった今、お互いが家族のような存在に違いない。


お互いの尊敬するところは?

前田さん:(山内さんの)おおらかなところ。彼女の性格が大らかで、すごく付き合いやすいということかな。

山内さん:(前田さんは)いつもきちっとしている。身なりからおうちの管理や何でもきちっとした性格の人ですね。本当にきちっとしています。そういうところは尊敬しますし、見習いたいと思っています。