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ある日、まさみさんはがんと診断されました。

再発でした。

15年前に闘い抜いた時と、今回は全く事情が違いました。彼女には自分の為に自由に使える時間が限られていたのです。

診断当時、まさみさんの日本にいる母親は介護を必要としていました。娘として親の介護の責務を果たすと心に決めていた彼女は癌の再発を知った時、難しい決断に迫られました。抗がん剤治療を始めればと日本とアメリカの行き来ができず、母の看病が出来なくなってしまうからです。彼女は癌の転移を覚悟の上で日本に行き来できる自然療法を選びました。ですが、その選択に後悔はなかったそうです。

「彼女にとっては、それが一番大切だったので」と夫のひろさんは語ります。

再発から2年後、がんの影響で大腸閉塞にを発症し専門医に行くと、すぐに救急に向かうよう指示をされ、二人は救急病院に向かいました。夜8時過ぎから様々な検査が始まりましたが、やっと医者に診てもらえたのは次の日の朝5時でした。一枚しかないタオルを毛布代わりに二人で一夜を過ごしました。

「一晩寝ずに、気が動転していて、なおかつ状況がどんどん変わっている中、さらに言語の壁もあって、一体そんな状況で誰が正確な判断をできるでしょうか?」

まさみさんはすぐに手術が必要だと知らされます。

その当時を振り返ってひろさんは「英語は話せましたけど、医療用語は難しくてとにかく情報は欲しいけれど理解できない状態でした。」と語ります。医療チームはすぐに手術をするかどうかの判断をひろさんに求めましたが、内容がいまいち理解できず、またベッドで苦しんでいる奥さんを隣で心配しつつ、どうしていいか分かりませんでした。

医師との初面談時には病院の通訳サービスを利用しましたが、また至難が続きます。「通訳の方が電話でヘルプしてくれるのですが、それでもスピードが速すぎて、会話の内容を録音して再度聞き直さなくてはなりませんでした。サービスを利用させていただいてとてもありがたかったのですが、受話器の行ったり来たりに時間が費やされ、お医者さんの時間を余計にとってしまって申し訳なかった。判断しなければならないスピード感を考えるとあまり効率的ではなかったです。」

手術をするか否かの決断を求められた際、ひろさんはどうしていいか分かりませんでした。たくさんの質問が頭の中を駆け巡ります。手術による副作用は?後遺症やリスクは?どれくらい頻繁に行われる手術なのか?成功率はどうなのか?混乱し、右も左もわからないときに二人は「癒しケア」と八浪先生を紹介されたのです。

ひろさんははじめて八浪先生に会えた時、どれだけほっとしたかをこう語ります。「僕たちは本当にラッキーでした。必要な情報をすべて日本語で聞けて、安心して判断することができました。」

手術後、自宅に戻り抗がん剤治療を始めた後も、「癒しケア」チームからの支援は続きました。「奥さんもチームの人たちが気に入って、ソーシャルワーカーともすごく気が合って、八浪先生にも本当に感謝していました。先生方の温かく優しい人柄もすばらしいです。」とひろさんは話します。

八浪先生は月1回から2回自宅訪問し、電話で密に連絡を取っていました。ひろさんとまさみさんはがんの専門医との会八浪先生は月1~2回自宅を訪問し、電話でも密に連絡を取り、ひろさんとまさみさんとのがんの専門医との会話まで、分かりやすく解説してくれました。彼らが今まで会ったすべての医師のなかで、こんなに密にコミュニケーションをとってくれたのは八浪先生だけでした。治療中の痛みを緩和する薬も処方してもらいました。「一度請求書について電話したこともありました。内容が分からず正当なものなのか否か等どう処理していいか分からなかったので」と様々な医師・病院から届く5枚-10枚もの請求書と常に対応していたひろさんは思い返します。

「一番良かったのは大事な情報をタイムリーに(「癒しケア」チームという)専門家からすぐ日本語で聞けたことです。正しい情報を持つことは本当に大切ですよ。」とひろさんは語ります。まさみさんが安楽死について情報を求めていた際には「癒しケア」チームのソーシャルワーカーから丁寧に、カリフォルニア州のEnd of Life Option Actという法律についての説明を受けることができました。また「癒しケア」チームの説明のお陰で、二人は事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)の大切さと必要性を理解することができ、もしまさみさんが自身で医療判断ができない時にも、自分の望む医療処置を指定する書類が作成されました。「そんな書類があるというのも知りませんでした。まだコピーが冷蔵庫に張ってあります。」「癒しケア」のソーシャルワーカーはそのほかにもエステートプランニング専門の弁護士や介護オプションなどの紹介も行いました。この間、ひろさんは仕事を続けながらまさみさんをサポートし続けました。

「癒しケア」は、まさみさんだけではなく、ひろさん自身にとっても助けになったそうです。「入院中、私も胃の調子が悪くて薬を飲んでいました。専門家の方に色々相談できて、頼れることができて本当に助かりましたし、大きかったです。自分の心の負担、ストレスというか、私自身の健康も助けられました。」

「本当に大感謝です。これ(「癒しケア」)がなかったら分からないことだらけなので、路頭に迷っていたかもしれません。色々細かいところまでケアをしてもらいましたけれど、皆さん本当にケアの専門家ですよね。情報も健康面もそうですけど、心の面でも支援していただきました。言葉に言い表せないけれど、本当にありがたかったです。」