癒しケアについて語る  -癒しケアチームによる対談その5 | Keiro
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癒しケアについて語る  -癒しケアチームによる対談その5

第一部:電話するのに早すぎるタイミングはない
第二部:介護者への支援、そして最も一般的なケース、認知症患者への支援
第三部:家族間の難しい会話
第四部:文化に配慮したケアとは?

「癒しケア」*は当プログラムの発足以来、文化に配慮した緩和ケアを、 200人以上に提供してまいりました。プログラムの誕生から2年半経った今、私たちは「癒しケア」チームの3人にこれまでの道のりについてお話を伺いました。五部にわたるこの対談シリーズでは、私たちのコミュニティにとってどのようなメリットがあるのか、深く掘り下げます。

「癒しケア」は患者と家族の状況に合わせて、一人ひとりに寄り添ったケアを提供しています。ここで紹介する事例はすべての人に当てはまるわけではありませんが、この対談を通じて、様々な選択肢と「癒しケア」の事例をご紹介したいと考えています。

*このパートナーシッププログラムはKeiroとプロビデンス・ヘルス・アンド・サービス(Providence Health & Services)の提携に基づいており、医師、看護師、ソーシャルワーカーが一つのチームとなって、複雑なヘルスケア制度の中で患者とその家族が病を乗り越えてゆけるように手助けを行っています。

第五部:緩和ケアについて考える

緩和ケアとホスピスの違いは何ですか?皆さんは終末期を迎えている方に接することはありますか?

ジョシュア・ノースカット氏:緩和ケアは病気の進行状況に関わらずいつでも利用することが可能です。ホスピスは治療を辞める時のみ〔利用するもの〕で、どちらかと言えば痛みを感じずに過ごすことに注力します。完治することを目指している方でも、緩和ケアが役に立つ場合があるのです。

福山可奈子氏:そうですね。でも終末期と死については、私たちが家族と共に良く考えて話し合う議題でもあります。もしかすると私たちが終末期〔ケア〕を提供していると勘違いされるのは、そのせいかも知れません。でも実際には、そうではありません。

どんなタイミングで患者さんや家族と死について話す機会をもちますか? 患者さんや家族の方から死について相談される場合もありますか?

福山氏:死や予後について教えてほしくないと、私たちに明確に伝わっている場合は別ですが、終末期に向かう過程でどんなケアを受けたいのかについて話し合うことが大切だと、私たちは強く思います。これについて話し合うことは大切です。今まで私たちは最初の訪問時に必ずそれを話題にして来ました。例えば「大切なことは何ですか?」、「希望しないことは何ですか?」など、最初にケアについて話す時は必ず聞きますし、ケアの目標についても話します。

八浪祐一・エドウィン医師:加奈子さんの言うように、私たちがこの話題に触れる時は、「あなたはどのようにケアされたいですか?」といった感じで切り出します。死と終末期については、「今後のことでとても心配なことがありますか?」、「死というものが迫った時に何をしたいですか?」という質問もします。

患者に緩和ケアを提供した時の例をいくつかお話していただけますか?

八浪医師:これはやや一般的な話になりますが、〔例えば〕軽度の認知症があって体重が減りつつある高齢の糖尿病患者を見ると、すこし悲しくなる時があります。もちろん保険などの関係もあるのは十分理解しているつもりですが、医師のメモに、甘い物を避けて健康的な食事をするように、と書いてあることがあるからです。このメモ書きは一般的な糖尿病患者であれば特に問題のない、スタンダードな目標だといえるのですが、緩和ケアという専門分野ではその人の年齢や状況、ライフスタイルや食事等様々な観点からその方全体を見る、全人的なアプローチを行います。時には、糖尿病性の機能障害を避けることが糖尿病患者の目標になる場合もあります。その場合ですと私なら「お母さんは実際に今よりも食べる必要があるので、特に年齢とこの段階でのケアの目標を考えれば、『健康的な食べ物』の幅をもう少し広げても良いですよ」と言います。制限を緩めてリスクを受け入れても構いませんよ、と言うのはちょっと勇気がいることだと思います。積極的な治療と生活の質のバランスを取る〔方法を知ること〕は緩和ケアに役立つツールであるだけでなく、高齢者医療のツールでもあると思います。

福山氏:八浪先生の例えを聞いている間に、癌と診断されて間もない頃に私たちの所を尋ねてきた患者さんのことを思い出しました。彼は厳格な食事療法で癌と症状を管理しようとしていました。彼は「それがとてもつらい」と訴えているような感じでしたが、家族は彼を懸命に励まして、食事療法を続けるようにと迫っていました。そこで私は最初、「食事療法をやりたくないなら、彼の判断に任せてもうすこし緩くしてもいいのでは」と言いたかったのです。けれども彼と過ごす時間が長くなるのに連れて、彼が生きたいと思っていることと、より長生きをするためにはその食事療法を守る必要があるのだ、ということが分かりました。

これは対照的な症例ですが、その人が生きることをゴールにしている場合、私たちはそれを奨励します。

けれどももしもその人が厳格な管理を望んでいなくて、予後を承知していて受け入れたいと思っているなら、「彼の食事療法には意味がないかも知れませんね」と言うでしょう。

八浪医師:処方箋についても同じです。薬を摂ることは良い事だけれども、それ程効果が大きくない場合もあるかも知れません。〔もしも〕お母さんが薬を飲むのを嫌がっているのなら、私が一緒に座って接種している処方箋に優先順位を付けることもできます。すぐに健康に直接害が及ばない薬については、摂らないというのも選択肢ではあります。常に「薬を飲んで」といつも大声で母親に言わなければならない労力と、薬を飲むこととバランスを取ることも考えてみてもよいと思います。

このことで私が思い出すのは、介護付き住宅施設に住んでいるある患者さんのことです。彼女は毎週金曜日に、介護者と一緒に施設の外にある美容院に通っています。彼女は高血圧なので利尿剤を飲んでおり、そのため頻繁にトイレに行く必要がありました。そのため私はこの患者については、金曜日は薬を処方しないで、外出中にあまり心配をしなくても良いようにしています。ひと言で言えば、それが緩和ケアの本質だと思います――患者たちのニーズを聞き出し、それを医療面のニーズと一致させる手助けができることだと思います。

「癒しケア」のソーシャルワーカーと高齢者を支援する一般的なソーシャルワーカーの本質的な違いは何ですか?

八浪医師:私が思うのは、病院のソーシャルワーカーは施設や介護者を探すために奔走しているので、患者と話し合い彼らの希望を尋ねるという、ソーシャルワーカーが本来やりたい事の為に使える時間がないかもしれない、ということです。「癒しケア」の場合は、ただ情報を提供するナビゲーター役だけではなく、本来の目的である事柄を実行できるゆとりが実際にあるところだと思います。

このプログラムから学んだ事柄の中で、特に心に残っているものはありますか?

八浪医師:時々、本当に難しい、厳しい状況に遭遇する場合もあります・・・[そういう場合は]簡単な答えはありません。私たちは、どんな人でも助けられると思ってこの分野に最初入って来る訳ですが、私が感じているのは、気持ちの面では彼らを少なからず支援できるかもしれないけれど、物理的または組織的な面では何もできない場合もある、ということです・・・それがとても辛いのです。

そして時には医療面でも、尽くす手がない場合もあります。そういう場合、私たちの役割は、ただ患者や家族と共にそばにいる、ことです。そうするほかに、私たちにできることが何もない場合もあるからです。しかしながらそういう時は、そこにいることこそが一番大切なこともあります。そして彼らの言うことに耳を傾けて、何を希望しているのかを理解することが大切です。これが私の学んだことです。

ノースカット氏:私は家族が関わってケアしているのを多く目の当たりにしています。良い意味で様々な関わり方があることを知りました。

福山氏:八浪先生が仰ったように、ただ様子を見守るしかないケースも沢山あります。ただ電話で話をしたり訪問で顔を合わせたりする以外何もできないので、時にはもどかしい気持ちにもなります。ですけれども、自分たちのやっていることに関して助かっているなどのお声から、私たち自身も患者さんやご家族から元気をいただいたりしています。

ノースカット氏:私も同感です。確かに「昼間は可奈子さんに電話できてありがたい」「週末は八浪先生に電話できるので、とても感謝しています」というお声を聞きます。例え頻繁に連絡をしてこない患者さんでも、そういった言葉をよく耳にします。私たちがそこにいるだけで、意味がある場合もあるといえるのではないでしょうか。

コミュニティや将来の患者に対して何かメッセージがありますか?

八浪医師:もしも痛みや困難な状況で苦労しているのなら、遅くならないうちに是非連絡をしていただきたいのです。誰かが癌を患っていてとても辛かったけれど、今はましになった、といった話を聞くと、胸が痛みます。〔苦痛を感じていた〕その時に電話をしていただければ良かったのに、と思います。そうすれば恐らくその頃の生活をもう少し楽になるよう支援できたかもしれないと思うと。。。痛みの緩和も私たちは支援することができますので。

福山氏:ご高齢の親御さんやあなた自身が本当に希望している事と今進んでいる方向性が合っているかどうかを確かめるためでも結構です。一歩踏み出して、「癒しケア」へぜひ問い合わせをしてみてください。例えば認知症の初期症状がある親がいるけれども、事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)のような書類が準備されていない場合は、手遅れになる前に準備することが大切です。私たちはその話し合いのお手伝いもできます。ぜひ頼ってください。

第一部:電話するのに早すぎるタイミングはない
第二部:介護者への支援、そして最も一般的なケース、認知症患者への支援
第三部:家族間の難しい会話
第四部:文化に配慮したケアとは?